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ISASニュース

星空の砂金採り
「あかり」による世界最大の小惑星カタログ

No.368(2011年11月)掲載

赤外線天文衛星「あかり」全天サーベイ観測の膨大なデータから、まるで砂金採りのように小惑星の存在のわずかな形跡を一つ一つ探し出し、小惑星カタログがつくられました。小惑星の掲載数は5120個、小惑星の大きさを収録したデータベースとしては、2011年10月現在、世界最大のものです。この成果は、小惑星の「族」を発見された平山清次先生(1874〜1943年)の誕生日である10月13日にプレスリリースされました。

小惑星探査機「はやぶさ」のように、小惑星を訪れてその場で観測したり、その岩石試料を地球に持ち帰ったりすることが可能な時代になりました。しかし、小惑星は55万個以上が知られていて、そのすべてを訪れるわけにはいかないので、天文観測によって小惑星の性質を調べていく必要があります。存在は知られていても性質が未知の小惑星はとても多く、天体の基本的な特徴の一つである大きさすらほとんど分かっていませんでした。小惑星はとても小さな天体で、大型望遠鏡を使っても大きさを実測できないからです。

「あかり」全天サーベイ観測データからは、星や銀河などの情報を集めた赤外線天体カタログが作成され公開されています。しかし、この天体カタログ作成では天球上の同じ位置にあるという条件で検出確認をしていたため、星空の中を時々刻々と移動する太陽系天体はデータ処理の過程で取り除かれていました。今回、取り除かれていたデータと既知の小惑星の位置情報を照らし合わせることで、小惑星からの赤外線放射を検出しました。この赤外線放射の強度から個々の小惑星の大きさを算出してデータベースにまとめることで、世界最大の小惑星カタログが完成したのです。この小惑星カタログは全世界に公開され、誰でも自由に使うことができます(新しいウィンドウが開きます http://darts.jaxa.jp/ir/akari/catalogue/AcuA.html)。

日本の天文衛星によって世界中の研究者が参照するデータベースを提供するという意義は大きく、小惑星の詳細な研究が国内外でさらに発展することが期待されます。

(臼井文彦)

「あかり」で検出した小惑星5120個の太陽系内の分布を、地球、火星、木星の軌道とともに描いたもの。天体の位置は2007年8月26日時点のものを計算した。「あかり」で求められた小惑星の大きさと反射率に応じて点のサイズと色を区別してプロットしてある。