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ISASニュース

「あけぼの」の運用、内之浦局10mアンテナから宮原局11mアンテナへ

No.367(2011年10月)掲載

磁気圏観測衛星「あけぼの」は、打上げ後22年たち、今なお現役のご長寿衛星です。おめでたいことではあるのですが、運用を支える地上設備を長期間維持していくのは大変なことです。22年前はまだウィンドウズパソコンは一般的ではなく、ミニコンで運用計画作成を行い、オープンリールテープにデータを保存し、ファクシミリで受信局と連絡を取っていました。これらはその後、ワークステーションや大容量ハードディスク、高度な情報伝達ツールに置き換えられてきました。

さて、打上げ以来、「あけぼの」の運用には鹿児島県にある内之浦局の10mアンテナが主に用いられてきました(表紙)。「あけぼの」が送信するデータにはS帯とU帯の2つの周波数があり、U帯を受信できる設備が内之浦局10mアンテナだけだからです。今となっては大変恥ずかしい話ですが、私が大学院生として初めて「あけぼの」の運用を行ったとき、相模原局から内之浦局のアンテナ担当の方に「10mさん」と呼び掛けるのを聞いて、変わった名字の人もいるものだなと思ったこともあります(新しいウィンドウが開きます 『ISASニュース』1990年2月号、No.107)。

しかし10mアンテナと周辺機器も老朽化が進み、故障する頻度が高くなっていました。そのため、統合追跡ネットワーク技術部そのほかの方々のご尽力により、内之浦局から2kmほど離れた場所にある宮原局に新しくつくった11mアンテナに運用を移行することとなりました。

準備完了が近づいたころ、「10mさん」との別れは突然やって来ました。10mアンテナで運用するために必要な、やはり「あけぼの」打上げから稼働してきた機器の一つが、6月末に故障したのです。宮原局への移行がすでに秒読み段階に入っていたこと、修理には時間と費用がかかりコストパフォーマンスが悪いことから、10mアンテナによる運用の再開を断念しました。ほかのアンテナを使ってS帯のみの運用を行いつつ、宮原局への移行準備を進めました。

そして7月16日に、無線免許に必要な実通試験が行われ、11mアンテナを使って初めて「あけぼの」にコマンドが送信されました。その後、8月下旬に宮原局の無線免許が交付され、本格的な運用が始まりました。

「あけぼの」を打上げ当初から支えてきた設備が、また一つ代替わりしました。「あけぼの」も、次世代にバトンを渡すまで、もうしばらくの間、頑張ってほしいと思います。

(松岡彩子)

宮原局11mアンテナ