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ISASニュース

古川宇宙飛行士、宇宙で健康診断
宇宙医学実験支援システムの技術実証

No.367(2011年10月)掲載

国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の古川聡宇宙飛行士が、9月6日に、地上の医師による健康診断を受けました。といっても、宇宙医学実験支援システムの技術実証の一環で実施したリアルタイム問診実験の話です。

宇宙医学実験支援システムは、心電計、脳波計、電子聴診器などさまざまな医学機器から取得したデータを軌道上で簡易解析するとともに一元管理し、その解析情報を軌道上と地上とでモニタできる共通的なプラットフォームを目指しているものです。これまでのISSの宇宙医学実験では、各機器での取得データなどをそれぞれ個別に地上で解析した後に結果を確認する方法が大半でした。軌道上でのモニタリングやデータ管理機能を持つ支援システムは、他宇宙機関にもありません。データ管理の一元化によって、異なる医学機器のデータの比較が容易になるなど、宇宙医学研究の発展にもつながることが期待されます。そして将来的には、宇宙という遠隔地における宇宙飛行士の健康管理への活用を目指しています。

冒頭に述べたリアルタイム問診実験に先立ち、8月中旬には軌道上で古川宇宙飛行士が自ら被験者となり、取得した医学データを専用のラップトップPCで自動解析し、解析結果を電子カルテに登録しました。軌道上のデータは地上にダウンリンクし、地上でも確認することができます。

リアルタイム問診実験では、古川宇宙飛行士と地上の医師とが電子カルテ(写真の左モニタ)を同時に見ながら、システムの操作性や解析結果の視認性なども含め、医師の視点から意見交換を行いました(写真の右モニタはラップトップPCのUSBカメラからの映像)。飛行中の健康状態の自己把握や医学データ管理への活用のめどが立った一方、古川宇宙飛行士からは電子カルテの数値表示が非専門家には分かりにくいのではないか、といった意見もありました。今後、星出彰彦宇宙飛行士のISS滞在中にも継続的にシステムの改善と実証を行い、医学分野のバックグラウンドのない宇宙飛行士でも容易に健康状態を自己モニタできるようなシステムの構築を目指していきます。

(池田俊民)

宇宙医学実験支援システムのリアルタイム問診実験の様子