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ISASニュース

巨大ブラックホールに星が吸い込まれる瞬間をMAXIが捉えた

No.367(2011年10月)掲載

2011年3月28日、りゅう座の方向に強いX線天体が突然に現れました。最初に発見したのは米国のスウィフト衛星で、間もなくMAXIでも増光を確認しました。「Swift J1644+57」と命名されたこの天体(現象)は、その後、電波や可視光でも追観測が実施され、39億光年の距離にある銀河で起こったことが分かりました。しかしながらこの天体、X線の明るさの変化がこれまでに見たことのない変わったものでした。

MAXIのデータを詳細に解析したところ、最初の発見の数時間前から増光が始まっており、それ以前はX線は検出されていません。発見以後も数日にわたって突発的に強いX線放射を繰り返すことから、重い星の死に伴って起こると考えられているガンマ線バーストではありません。

スウィフトとMAXIのデータを詳細に解析した結果、このX線の正体は銀河の中心にあるブラックホールに星が飲み込まれる瞬間を捉えたものらしいと判明しました。それまでX線を出していなかった銀河の中心核が急に活動を開始するところを捉えたのは、今回のスウィフトとMAXIが初めてです。この中心核から地球方向に向けて飛び出した光速に近いジェットからX線が放射されたと考えられます。

MAXI(全天X線監視装置)は国際宇宙ステーションに搭載されたX線観測装置で、全天をモニター観測しています。今回の成果は、その特徴を最大限に生かしたものです。この成果は英科学誌『Nature』(2011年8月25日号)に掲載され、それに伴いJAXAからもプレスリリースを行った結果、新聞やニュースでも大きく取り上げられました。また、この天体はMAXIチームからの提案によりX線天文衛星「すざく」でも緊急観測を実施済みで、現在データ解析を進めています。

(冨田 洋)

MAXIによる増光前後の画像。増光前(左)は6ヶ月積分画像でも何も見えないが、増光後(右)では明るく光るSwift J1644+57がクリアに見える。