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ISASニュース

Apollo月震データのアーカイブ公開

No.367(2011年10月)掲載

なぜ今Apollo計画のデータアーカイブを日本で行っているのか、という点についてよく聞かれます。NASAが実施したApollo計画には、日本が学ぶべきノウハウが詰め込まれています。これは観測データという観点においても例外ではありません。Apollo計画のノウハウを吸収し、日本の月惑星探査データへのフィードバックを行うことを目的としています。

Apollo計画の中でも11号から16号までほぼ連続的に観測を行った月震データは、約20年前にテキサス大学と宇宙研の協力により、7トラックおよび9トラックの磁気テープから8mmのカセットテープへと移行されました。そのため宇宙研にも同コピーが保管されており、日本の月震研究を支えています。カセットテープは比較的容易にデータを読み出すことができます。約40年前に行われたミッションには失われたデータもあり、今でもテープを探すプロジェクトが続けられています。当時のこの協力がなければ、読み出すために莫大な費用を要した可能性があります。

Apollo月震データの容量は約100GBです。今ではそれほど大きな容量ではありませんが、40年前のコンピュータの処理能力・媒体の記録密度を考えると、膨大であることは間違いありません。当時の論文にも、人的・金銭的コストが制限された中で、さまざまな工夫をしたことが記されています。

 Apollo月震データはテキサス大学の独自フォーマットで、必ずしも扱いやすいフォーマットとして整備されているわけではありません。そこで現在のデータベース技術を用いて再整備し、ウェブ経由での閲覧が可能なシステムを開発しています。それが、DARTS Apollo Seismic Experimentsです(新しいウィンドウが開きます http://darts.isas.jaxa.jp/planet/seismology/apollo/)。これらのデータベースは、地球の地震学で用いられる汎用フォーマットであるSEEDやSEG-Yをつくるためのプラットフォームにもなります。将来的には日本の月惑星探査で用いられる惑星探査用地震計にも応用したいと考えています。

(山本幸生)

20年前に複製されたカセットテープ