宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

満6歳を迎えた「れいめい」の近況と今後

No.367(2011年10月)掲載

小型科学衛星「れいめい」は、2011年8月末で満6歳を迎えました。この間の継続的なオーロラ観測は、私たちに画期的な成果をもたらしました。この成果は、「オーロラの美と神秘」を解き明かす鍵となるものとして、高く評価されています。

一般的に肉眼で美しいと感じるオーロラは数kmの空間構造を持ちますが、「れいめい」は、オーロラを引き起こす降下電子とオーロラ発光現象の因果関係を、空間分解能1kmで明らかにすることが可能です。また、オーロラカメラの狭い視野(対角11°)を、精密に地球磁力線の根元に指向させる3軸姿勢制御機能も重要です。これらの特徴を生かし、オーロラ微細構造形成には乱流散逸のような不安定性が働いており、アルフベン波加速が重要であることなどの成果を得ています。

2008年8月に電子計測器が機能停止したため、それ以降「れいめい」は、中・低緯度の大気光と、雷の放電に伴う高高度での発光現象スプライトを主な観測ターゲットとしました。中・低緯度では、カメラの視野を地球リム(縁)方向に向ける姿勢制御を行うことで、高度90km付近の熱圏に存在する酸素原子とOH分子の大気光高度分布を捉えます。また、同時に数多くの雷発光がカメラ視野内に発生し、ごくまれにスプライト現象も捉えることができます。これにより、世界初の衛星によるスプライト窒素分子発光の単色画像を取得し、また大気光高度分布のグローバル分布を明らかにしました。

2011年1月に、搭載している光ファイバジャイロZ軸(FOG-Z)が故障しました。「れいめい」の理学観測には3軸姿勢制御が必要なため、FOG-Zを使用しない3軸姿勢制御系で衛星を運用する改修を現在進めています。具体的には、姿勢決定方式を、従来の「恒星センサ(STT)、FOGを用いた拡張カルマンフィルタ法による姿勢決定」から、「精太陽センサ(NSAS)、地磁場センサ(GAS)を用いたTRIAD法による姿勢決定」に変更します。この新しい姿勢制御プログラムは近々、「れいめい」にアップロードされる予定です。

(坂野井 健)

「れいめい」が2008年9月2日18:55(世界時)に捉えたスプライト窒素分子発光とOH大気光