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ISASニュース

「あかつき」の挑戦 最終回に寄せて

No.366(2011年9月)掲載

『ISASニュース』に連載された「『あかつき』の挑戦」も今月号で終了すると聞きました。長い間読んでいただき、プロジェクトマネージャーとして感謝致します。

思い返せば、「あかつき」のプロジェクトが正式に提案されたのは、2001年1月の第1回宇宙科学シンポジウムでのことでした。その1年くらい前から私自身はプロジェクトに関わるようになりましたが、ミッション提案までの1年間は東京大学の研究室を空にして、講義もほかの先生に代わってもらい、宇宙研の一室を借りて準備を行い、提案前の大みそかまでシンポジウムの予行演習を繰り返したことを思い出します。そこにこぎ着けるまでには、工学の中谷一郎先生、NECの皆さん、大学や宇宙研の理学メンバーとの激しい議論があり、ミッションの主要なポイントはそこで決まったものを10年かけて実際の機体につくり込んでいったのでした。当時は、提案書依頼書(RFP:Request for Proposal)などなかったので、このような総力を挙げての検討も可能だったのだと思います。その後、新たにプロジェクトに加わってくださった方々の努力も忘れることはできません。

いよいよ金星軌道へ、と世界の研究者が待ち構えていた投入に残念ながら成功できなかったわけですが、しかし、そのことでこのミッションの価値がいささかも下がったわけではありません。金星の大気の謎を解く使命はいまだに我々の手の内にあります。最後の力を振り絞ってでも、「あかつき」は金星にたどり着くでしょう。「あかつき」の挑戦はこれからも続きます。

(中村正人)