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ISASニュース

観測ロケットS-520-26号機の噛合せ試験

No.366(2011年9月)掲載

地球表面から高度70〜150kmの領域は下部電離圏と呼ばれ、気球には高すぎ、人工衛星には低すぎて、飛翔体からの長時間観測が困難な空間です。この領域には電離大気(プラズマ)と中性大気が存在し、前者は基本的に電磁場に束縛されるのに対し、後者は電磁場とは関係ない方向に運動しようとします。ところが、下部電離圏では中性大気と電離大気が適度に混ざり合うため、2つの大気成分が衝突を繰り返しながら複雑な運動をするようになります。そのような領域は宇宙空間でも特異ですが、ここに生起する不思議な現象の理解を深めるために、観測ロケットS-520-26号機実験が計画されました。

科学衛星同様に観測ロケットにも、テレメータ、電源、タイマー・点火系といった共通計器が搭載されますが、更新がなされ、今後打ち上げる観測ロケットでは新アビオニクスと呼ばれるシステムを採用することになっています。これは、従来独立していた個々の機能をモジュール化して統合することによって、機能拡張が容易で、かつモジュール単位で交換/増設可能なシステムを目指したものです。また、モジュール間の計装簡略化、組み立て・艤装性向上、統合による製作費削減などのメリットも考慮されました。

新アビオニクスに更新されるということで準備は念入りに、まず4月に観測装置と新アビオニクスの事前噛合せ、その直後の計器合せ、7月の観測装置噛合せ、8月の本噛合せと、計4回の試験を実施しました。それでも、試験のたびに不具合は出てきます。噛合せ試験終了直後にこの原稿を書いていますが、思い出される不具合は枚挙にいとまがありません。夜遅く(朝早く)まで不具合対策に努めてくれた実験班員には、厚くお礼を申し上げます。

S-520-26号機は今後、内之浦へ向けて輸送され、実験班員によるフライトオペレーションが開始されることになります。特に、新アビオニクス搭載後の初めての実験となるため、地上系との接続には十分な注意を払って作業を進める必要があります。実験の成果報告に、ご期待ください。

(阿部琢美)

噛合せ中に行われた頭胴部つり上げ状態でのテレメータ偏波チェック