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ISASニュース

第10回「君が作る宇宙ミッション」開催

No.366(2011年9月)掲載

今年も宇宙に夢を抱く高校生たちが相模原に集結しました。第10回の「君が作る宇宙ミッション」(きみっしょん)が、8月1日〜5日に行われました。東日本大震災の影響で一時は開催が危ぶまれましたが、無事に例年通りの規模・日程で実施され、参加者が有意義な1週間を過ごせたことを、運営スタッフ一同喜んでいます。ご支援・ご協力いただきました宇宙科学振興財団、ハーベスト、宇宙研生協、そしてJAXA職員の皆さまに、この場を借りて感謝申し上げます。

年を追うごとに高校生への認知が深まっていることに加え、「はやぶさ」効果による宇宙科学への関心の高まりも追い風となって、今年の応募数はこれまでの最多を記録し、スタッフ一同うれしい悲鳴を上げながら参加者の選考を行いました。選ばれた精鋭24名は皆、宇宙に関する知識もモチベーションも極めて高く、4班に分かれたミッション作成でも密度の濃い議論が進められました。

2日目に、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」プロジェクトリーダの森治先生に講義をしていただきました。ご自身の高校生時代から今に至るまで、また「IKAROS」を例に宇宙ミッションを進めるとはどのようなことかなど、メッセージを込めた熱い語りに高校生たちは聴き入っていました。

例年、頭の切り替えを兼ねて、3日目の午後に工作をしています。今年は新企画の「エッグドロップ」を行いました。高いところから落としても卵が割れない装置をつくる、というものです。「卵がもったいない」と筆者は当初引き気味だったのですが、やってみると、これは面白い!説明を受けてからの工作の時間はわずか40分ほどだったのですが、出来上がった12機はみな独創的なデザインで、かつ、それぞれ自分なりの理にかなった構造を工夫していました。実際に落としてみると、うまくいったものもいかなかったものもありましたが、自分のアイデアを実験で試してみるとはどういうことかを学んでくれたと思います。なお、使用した卵は割れたものも含めてすべてスタッフがおいしくいただきました。

丸3日かけて、高校生たちが議論・検討を重ねた結果は、4日目の夕方の研究発表会で報告されました。多くの先生方、職員の方々に聴きに来ていただき、質問・コメントをいただきました。A班「宇宙発電所の建設〜MADE IN SPACE〜」は、人類が幸福になるために宇宙で何ができるのか、という高い視点からの議論、B班「宇宙船内での循環システムの開発」は、一つのミッションというよりはさまざまなミッションに使える技術の検討で、これまでにない着眼点でした。C班「エンケラドスの生命体探査」は長期間のミッションの行程を定量的に見積もり、D班「Fresh ISS Cooking」の発表では宇宙用の包丁の模型を紙でつくって実演するなど、具体的・定量的に検討した跡がうかがえました。

発表会の講評でも述べたのですが、高校生たちが考えたミッションは、まだまだとても完全なものとはいえません。しかし、この1週間で学んだ「自分のアイデアをどのように実現させていくか」という経験は、一生の財産です。まずは来年春の日本天文学会ジュニアセッションに向けて、そしてさらに将来に向けて、それぞれのミッション検討を続けていってほしいと思います。

(山村一誠)

講義の後で、森先生を取り囲む高校生たち。この真剣なまなざしを見よ。

ミッション作成で激論を交わす高校生と大学院生スタッフ