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ISASニュース

JAXA相模原キャンパス特別公開

No.365(2011年8月)掲載

「はやぶさ」の地球帰還に沸いた昨年の特別公開からはや1年、特別公開の季節がまたやって来ました。昨年は2日間で約3万4000名もの来場者をお迎えし、キャンパス内もカプセル展示会場となった相模原市立博物館も大混雑で、私自身も待ち行列の制御に奔走した記憶だけが残っています。

今年も宇宙ブームは衰えていないように見え、主催者側としては節電要請を受け入れつつも2日で2万名程度の来場者に応対しなければならない事態を見込んでいました。あいにく両日とも朝から雷雨があるなど天候が危ぶまれたこともあって、来場者数は初日の7月29日(金)が6024名、30日(土)が7029名で、2日間の来場者は合計1万3053名となりました。この数は正門・西門・北門でのパンフレットの配布総数そのものですから、家族の人数分取らない方や2日間来場された方などを考慮すると、実際にはもう少し多い来場者があったのかもしれません。以前のような1日のみの開催でこれだけの数を受け入れるのは至難の業。今回は2日開催で来場者を分散させるという狙いの効果が多少は現れたようです。お迎えする側も動線のつくり方などにだんだん慣れてきて、以前と比べて混雑感もだいぶ軽減できたようで、来場者の満足度はかなり高かったようです。

今回は新しい試みもいくつか行うことができました。その一つが中庭に出店した「銀河連邦物産展」で、銀河連邦を構成する6市町が食品を中心とする特産品の即売を行いました。例年食堂が混雑して食事や休憩を取るのに一苦労するのですが、今回は中庭に昼食会場を分散させることでゆとりを出すことができました。津波で被災した大船渡市の復興に向けて、わずかながらお手伝いをできたこともうれしいことです。

さらには、昨年は工事中で使用できなかった東京国立近代美術館フィルムセンター相模原分館との協力関係をさらに深めました。2009年から始めた大人向けの「宇宙科学セミナー」は今年も、藤村彰夫(「はやぶさ」サンプルキュレーションチーフ)、森田泰弘(イプシロンロケット開発リーダー)、川口淳一郎(「はやぶさ」プロジェクトマネージャ)、中村正人(「あかつき」プロジェクトマネージャ)という豪華講師陣。より多くの方にお聴きいただけるよう、午後の第2部の整理券を午前の第1部の講演時間に配布するなど、腐心したつもりです。また、今回は1時間のセミナーだけでなく、引き続いて短編映画の上映も行うことができました。上映された『黒い太陽』(1936年製作)は、戦前に北海道で観測された皆既日食を記録したドキュメンタリーで、当時の観測隊の様子や太陽に対する理解について知る貴重な機会となりました。現在は2006年打上げの太陽観測衛星「ひので」が地球周回軌道上から可視光やX線で太陽黒点やコロナの活動を24時間365日モニターしているわけですから、70年間の科学・技術の進歩には驚かされます。

相模原市立博物館では従来から行ってきたプラネタリウム上映や「ミニミニ宇宙学校」に加え、特別展示室での特別展「宇宙とつながる私たち〜探査機に託したメッセージ」や「池下章裕 リアル・スペース・アート展2011」(ともに8月17日(水)まで開催)の同時開催を図ることで、いわゆる研究紹介とは違う切り口で紹介することもできました。来年度以降も規模こそ縮小するにせよ、宇宙関連の特別展を特別公開に合わせて実施できないかと相談しているところです。

相模原キャンパスでは展示室を中心とした常時公開も拡充中で、少しずつ展示内容が変わっていることにお気付きになると思います。土日祝日には学生アルバイトが解説してくれています。進化し続ける特別公開・常時公開にご期待ください。

(阪本成一)

銀河連邦物産展の様子。銀河連邦は、宇宙研の施設があることが縁で交流を始めた6市町で構成される。