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ISASニュース

内之浦の射場開発、本格スタート

No.365(2011年8月)掲載

改修メーカーもようやく決まり、この夏、内之浦の射場開発が本格的に始まろうとしています。次期固体ロケット・イプシロンの目的は、ロケットを簡単に打つ仕組みをつくって、みんなの宇宙への敷居を下げようということにあります。その心は、「運用をシンプルに、設備をコンパクトに」というわけです。このような革新コンセプトは射場の開発に大きな影響を与えていて、その代表選手がモバイル管制です。

一方、M-V型ロケットのランチャー・整備塔方式の打上げ方はすでに世界一コンパクトなのですが、いくつかの観点から改修を加える計画です。一つは、音響振動(ロケットの燃焼ガスから発生する音が地面で跳ね返って衛星を揺さぶる現象)の緩和です。そこで、シュラウドリング(リング状のロケット支持台)の位置を高くして、かつリングの下に煙道(燃焼ガスを地面に沿って逃がしてやる滑り台)をつくろうと思っています(図参照)。6月号の「ISAS事情」でもご紹介した通り、この作戦の効果を確認するために能代ロケット実験場で燃焼試験を進めているところです。

そして、固体ロケットの伝統工芸ともいうべき斜め打ちの卒業が、もう一つのポイントです。斜め打ちには飛行安全面で大きなメリットがあります。特に尾翼付きのロケットの場合には、必ず海の方に飛んでいってくれるので、とても安心です。先人の先生方の知恵の深さには今もって驚くばかりです。しかし、イプシロンのように尾翼がない場合、どのみち制御系が狂うとねずみ花火のようにいかようにも飛んでいってしまいますから、かつてほどメリットは絶対ではありません。打上げの手間という観点から見ると、ロケットは真っすぐ立てて組み立てるので、そのまま打ってしまった方がはるかに簡単というわけです。

改修構想をよく見ると、イプシロンはM-Vまでに積み上げてきた大切なエッセンスをしっかり受け継ぎ、伸ばそうとしていることが分かります。M整備塔の大扉を開けて姿を現したイプシロンがランチャーから飛び立つ。何とも素晴らしい光景だと思いませんか?

(森田泰弘)

整備塔とランチャーの改修構想