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ISASニュース

イプシロンロケット模擬射点音響環境計測試験

No.363(2011年6月)掲載

イプシロンロケットの開発試験もいよいよ本格化してきました。今回ご報告するイプシロンロケット模擬射点音響環境計測試験(Scaled-model Measurement for Acoustic Prediction:SMAP)は、その先鞭となるものです。イプシロンロケットの射場は内之浦に決定しましたが、発射時の音響環境を従来に比べて緩やかにするため、発射台(射座・煙道)形状は見直しをする計画です。そのため、M-Vロケットでの音響予測の知見を持つ宇宙研、数値流体力学(CFD)技術を駆使してH-IIA・H-IIBロケットなどの音響を予測してきた情報計算工学センター(JEDI)と協力し、低騒音発射台の設計と音響予測を実施してきました。

SMAPは、これまでの取り組みを踏まえた音響低減効果の確認とロケット設計に用いる音響条件の設定を目的として、1/42サイズのミニチュア発射台を製作し、同比率の小型モータを燃焼させて音響環境を計測する試験です。イプシロンロケットプロジェクトチームからの要請により固体モータ燃焼試験の経験豊富な宇宙研を主体とし、加えて高度な音響計測技術を有する航空プログラムグループ(APG)にも協力いただき、まさにALL-JAXAの実施体制となりました。ゆえに、筑波(イプシロン)、相模原(宇宙研、JEDI)、調布(APG)、能代に散らばる職員間の情報共有、さらには震災の影響もあって準備が滞り、現地(能代)調整事項が多々ありましたが、どんな困難な状況でも嫌な顔一つせず(むしろ楽しんで?)柔軟に対応していただいた実験班の方々を頼もしく感じました。今回のSMAP第1ステージ(SMAP-1)では、ミニチュアサイズであるこの試験が音響学的に適切に実施できていることを確認し、より確実で高精度な音響計測を実施するための課題が抽出され、大成功でした。現在、SMAP-2(6月下旬から7月上旬に実施予定)に向けた準備を進めています。

最後にこの場をお借りして、宇宙研をはじめとした実験関係者各位に感謝するとともに、今後ともご支援のほどよろしくお願い致します。

(宇井恭一)

ミニチュア発射台における小型モータの燃焼試験の様子

集合写真