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ISASニュース

「あけぼの」「ひので」運用延長審査報告

No.362(2011年5月)掲載

すべての人工衛星には目的があります。宇宙研の科学衛星の目的は、究極的には宇宙の真理の探究ですが、その管制運用には多額の経費が掛かるので、無条件にいつまでも続けるわけにはいきません。例えば、JAXAの技術試験衛星などの場合は、試験が完了してその目的を達することができたら、比較的短期間で運用を終了してしまうこともあります。科学衛星に関しても、当初の想定寿命が経過し最低限の成功基準を達成したものについては、その後の運用延長の妥当性を科学的な観点から審査しています。審査を担当するのは、宇宙研の諮問委員会の一つである宇宙理学委員会です。その委員が中心となって審査小委員会を立ち上げ、各科学衛星についてほぼ3年ごとに、運用延長の科学的妥当性を審査しています。

新年度を迎えるにあたって、今回審査の対象となったのは、磁気圏観測衛星「あけぼの」と太陽観測衛星「ひので」です(赤外線天文衛星「あかり」も審査の時期なのですが、冷凍機の性能劣化の技術的な見極めが先、ということで今回は見送られました)。「あけぼの」は1989年に打ち上げられた長寿の科学衛星で、2007年度末の審査に引き続き、今回が2度目の運用延長審査になります。「ひので」は2006年に打ち上げられ、これが初めての審査です。今回の審査に関連した科学的な背景として、2011年に予測されていた太陽活動極大期が意外に穏やかで、これから2013年にかけてさらに太陽活動が激しくなっていくと予想される、ということがあります。「ひので」は、その優れた観測性能を生かして、これからは多くの太陽フレアなどより激しい太陽活動の様子を捉えることが期待され、2011年度から3年間の運用延長が問題なく認められました。

「あけぼの」についても、地球磁気圏と太陽活動の関連性の長期的モニターなどの重要性が認められ、データアーカイブの整備を条件として、同じく3年間の延長が認められました。

このようにして、科学的成果とデータの公開性、費用対効果のバランスを厳しくチェックした上で、科学衛星の運用は実施されているのです。

(海老沢 研)

「あけぼの」による地球放射線帯強度(上図、>2.5MeV電子)と太陽黒点数(下図)の長期的な相関