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ISASニュース

「ひので」が今サイクル初の巨大フレアを観測

No.362(2011年5月)掲載

「やっと長い冬眠から目を覚ました。まだまだ眠そうだが」。これは、私たちの母なる星、太陽の活動性について、我々が現在抱いている印象です。ここ数年の太陽活動は、約100年ぶりの低水準にありました。2009年に新たな活動サイクル(第24活動周期)に入りましたが、今までより活動の立ち上がりが遅く、大きなフレアが起きていない状況が長く続いていました。

2011年2月15日に巨大フレア(爆発現象)が太陽表面で発生し、これを太陽観測衛星「ひので」が観測しました。今サイクルで最初のXクラス(大規模)フレアです。前回のXクラスフレアの発生(2006年12月)から4年以上たっていました。

14日朝、中規模フレアが太陽面上で発生しフレア注意報が出たため、その日の夕方の衛星運用で急遽、フレア観測に特化した観測プログラムに組み替え、大フレアの発生に備えました。「ひので」は、X帯での科学データダウンリンクが不安定になって以降、S帯を用いてダウンリンクを行っています。そのため取得できるデータ量に大きな制限が課されており、いつ突発的に発生するか分からないフレアについて高い分解能で世界一級の観測データを取得することは容易ではありません。しかし、X線望遠鏡が持つフレア発生を検知し場所を特定する機能(搭載コンピュータによるX線画像の解析)でフレアを特定し、可視光磁場望遠鏡はその情報をもとに視野をフレア領域に絞って短い露光時間でさまざまな画像を高頻度に撮影し(表紙写真)、今まで得たことがない貴重なデータを取得しました。

今後、2013年と予想される極大期に向けて太陽活動はより活発になり、今回を上回る大規模フレアの発生頻度が高くなることが予想されます。「ひので」の観測は、フレアや活動領域など、太陽の活動性により重点を置いて今後も続けられます。

(清水敏文)

「ひので」X線望遠鏡で見た今サイクル初の巨大フレア