宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

東日本大震災による被害状況について

No.361(2011年4月)掲載

3月11日の東日本大震災では、日本の広い地域が甚大な被害を受けました。科学衛星やロケットの試験を行っているJAXAの事業所・施設も被害を受け、復旧作業が続いています。また宇宙科学研究所ゆかりの地域でも被災された方が大勢いらっしゃいます。被災地のすべての皆さまにお見舞いを申し上げるとともに、ご心配いただいている全国の読者の方々に、断片的ではありますが、3月末時点で編集委員会が聞き取りをした、JAXA関連施設や地域の被害状況についてお伝えします。

2008年から大気球実験を行っている大樹航空宇宙実験場(北海道広尾郡大樹町多目的航空公園内)は、人的にも施設・設備もほとんど被害はありません。しかし2007年まで大気球観測所が置かれていた岩手県大船渡市三陸町は大きな被害を受けました。吉浜地区では、お世話になった民宿キッピンが流され、降下させたゴンドラの海上回収を依頼していた漁船の権現丸も失われたとのこと。旧・三陸大気球観測所の関係者の方々は無事と聞いていますが、ガソリンの不足など、ご苦労が続いているようです。越喜来地区では津波で防波堤が決壊し、亡くなられた方も多くおられます。大気球実験班がお世話になった佐々木旅館は2階まで津波が押し寄せ、丸八旅館や中華料理の北京亭は跡形もないとのこと。被災された方々の生活が、そしてウニやホタテ、ワカメなど、おいしい海産物を楽しめた三陸町が、一日でも早く元に戻ってほしいと祈ります。

ロケットエンジン開発の拠点である角田宇宙センター(宮城県角田市)では危険につながる大きな破損はなかったものの、さまざまな施設にダメージがあり、検査・復旧作業が続いています。ライフラインは復旧してきていますが、やはりガソリン不足が続いているとのこと。

記念すべき日本初のロケット発射場であった秋田県由利本荘市の道川、そして現在ロケットエンジンの地上燃焼試験を行っている能代ロケット実験場(秋田県能代市)は、直接の被害としては2日間の停電があっただけのようです。能代では、ちょうど再使用型ロケットエンジンの燃焼試験の準備中でした。実験班員は停電で状況が分からない中、津波に備えて避難したそうです。地震後はガソリンが不足し、まだまだ寒いのに暖房用の灯油が手に入りにくい、つらい状況にあります。

JAXAの中心的な施設であり、最近では科学衛星の試験も多く行われている筑波宇宙センターも、人的な被害はなかったものの、建物や設備にかなりの被害が出ています。総合環境試験棟などに大きな被害があって宇宙機の試験が止まり、一部実験設備の200V電力も止まっているとのこと。宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の運用建屋は頑張って復旧させ、「こうのとり」2号機の国際宇宙ステーションからの離脱、大気圏再突入までの運用を、筑波から行うことができました。

太平洋岸の非常に広い範囲を津波は襲いましたが、さすがに九州ではその影響はなく、H-IIAなどの主力ロケットを打ち上げる種子島、およびイプシロンロケットの射場に決まった鹿児島県肝属町内之浦は被害なしです。

最後に相模原キャンパスの状況も少しお伝えしておきます。相模原でも大きな揺れに襲われましたが、地震の被害は軽微なものでした。むしろ電力節減のための計画停電の影響が大きく、宇宙機の試験などに影響が出ています。この影響で、ホームページがご覧になれない時間帯があるかもしれません。中断していたキャンパス一般公開は、4月4日から再開しました。ただし、計画停電などで中止することもありますので、ホームページなどでご確認ください。

宇宙科学研究所の関連施設がある4市2町は、相互の理解や親善のために「銀河連邦」という名前で交流を行っています。「銀河連邦サガミハラ共和国」からは、「銀河連邦サンリクオオフナト共和国」への支援を始めていただいていると聞いています。宇宙科学研究所としても、被災された宇宙科学研究者・学生がしばらくの間、相模原で研究を継続できるよう、受け入れを始めました。被災された方々の生活が少しでも早く元に戻るよう皆で力を合わせたいものです。

(村上 浩)