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ISASニュース

IKAROS航宇日誌 3

No.359(2011年2月)掲載

前回の日誌(『ISASニュース』2010年8月号)で定常運用後の様子を報告した小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSですが、その後も太陽の光をいっぱいに受け順調に深宇宙を航海しています。今年の1月4日には、ついに地球から1億km以上離れました。では、IKAROSの航海を簡単に振り返ってみましょう。

定常運用に入ったIKAROS。『ISASニュース』2011年1月号で津田雄一さんがレポートしてくれたように、将来ミッションのための貴重なデータを取得し、フルサクセスに向け着実に進んでいきました。2010年9月に入り「通信不可帯」という山場を迎えます。IKAROSは軌道、太陽―地球の位置関係により、どうしてもアンテナを地球に向けられない時期が生じてしまいます。

■2010年9月14日

ついに通信不可帯に突入しました。初めての通信不可帯、低利得アンテナ(LGA2)での通信と、いろいろ不安だったのですが、9月18日にはあっさりと通信不可帯を越え、通信を再開することができました。

後期運用に向けての検討を始めた11月。IKAROSにとって大きなイベントが近づいていました。「金星フライバイ」です。

この時期、金星探査機「あかつき」が重要な局面を迎えるためIKAROSの運用は2週間休む予定でした。運用がないこの間、IKAROSは12月8日の日本時間16時40分、金星からの距離約8万kmのところをフライバイする計画でした。

実は、このフライバイに向けて、金星撮像という密かなたくらみが進められていました。軌道計画と姿勢予測から最適な撮像タイミングを解析しました。運用計画担当に何百ものタイムラインを作成し登録してもらいました。撮像は4台のカメラで2回ずつ合計8枚、時間を機体スピン周期の8分の1ずらすことで金星を逃さないように設定しました。

■2010年12月8日

一つの不安は、IKAROSの姿勢が予測から太陽側に5度以上違うと、金星がセイルの影に隠れてしまうことでした。結果は皆さんご存知の通り、見事、金星フライバイの証拠写真を撮ることができました(表紙写真)。

■2011年2月10日

その後、2度目の通信不可帯も無事に脱けてビーコン運用を続けていましたが、2月10日にテレメトリ・コマンド運用することができ、2011年初のハウスキーピングデータを取得することができました。2月10日現在、地球から1億3000万km以上離れましたが、元気いっぱいに飛び続けています。

(澤田弘崇)

2010年12月8日、IKAROSが金星フライバイの際に自身の姿越しに撮影した金星。金星までの距離は約8万km。

『イカロス君の大航海』好評発売中!。 IKAROSのことを子どもたちにも分かってもらおう、IKAROSを通じて宇宙工学を学んでもらおうと、宇宙教育センター、月・惑星探査プログラムグループ、広報部の協力で実現しました。分かりやすい内容ですので、ぜひご覧になってください。