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ISASニュース

固体ロケット、内之浦に還る

No.359(2011年2月)掲載

必ずここに帰ってくると思っていましたが、ようやくイプシロンロケットの打上げ射場が、固体ロケットの「聖地」内之浦に正式決定しました。イプシロンの原動力は全国の固体ロケット応援団と内之浦応援団の皆さんの熱い思いですから、これでようやくそろったという感じですね。もちろん、どんな困難にも負けないプロジェクトチームの不撓不屈の精神、そして最後はJAXA全体がイプシロンのために一丸となったその姿にも美しいものがあったと、私は思います。

イプシロンの初飛行は2013年。内之浦の射場開発はいきなり全力疾走です。何ともうれしい悲鳴ですね。今回の射場開発では、打上げまでの期間が短いので、既存の設備を最大限に活用する計画です。M-Xロケットのランチャーも斜めに傾ける前は真っすぐ立っていますから、垂直打ちに問題はありません。もちろん、発射時の音響を緩和するためなどもあって、ランチャーまわりは少し改造しようと考えています。一方、イプシロンの魅力の一つであるモバイル管制など革新技術の導入により、管制室の様子はすっかり変わってしまうことでしょう。ロケットの知能化などにより、大きな管制室の機能がパソコン1台程度に集約されてしまうというわけです。

こうしてイプシロンと内之浦にも展望が開けてくると、大切なのは将来の構想ですね。イプシロンロケットでは2段階開発を打ち出しており、さらなるコストダウンを目指す計画です。その中でロケットの機能をさらに高めて、追跡レーダなど、いわゆるアンテナ系もモバイルできるくらいコンパクトにしようと考えています。構造がシンプルな固体ロケットとコンパクトな射場……。この最強の組み合わせによって、皆さんの宇宙への敷居をどんどん下げていこうというのが、私たちの狙いです。2013年のイプシロン初飛行に向けて申し分のない開発となるでしょう。皆さん、今後とも応援よろしくお願い致します。

(森田泰弘)

内之浦のM整備棟を背景にしたイプシロンロケット(想像図)