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ISASニュース

宇宙学校 開催〜とうきょう・こおりやま〜

No.357(2010年12月)掲載

昨年度と同様に今年度も11月3日(文化の日)に、東京大学教養学部(駒場キャンパス)において宇宙学校が開催されました。対象は小学4年生より中学生ということでしたが、「おおきなおともだち」(進行役・校長の阪本成一教授談)も含めて415名という、宇宙学校としては過去最高の入場者数を記録しました。それもそのはず、今年度注目を集めた三つの深宇宙探査機が勢ぞろいという話題性抜群の構成で、入場者の皆さんをお迎えしたのです。阪本校長の開校式に続き、「金星到着迫る!『あかつき』の挑戦」(今村剛准教授)、「ソーラーセイル宇宙船IKAROSの冒険」(津田雄一助教)、「帰ってきた小惑星探査機『はやぶさ』」(西山和孝准教授)という授業が1時間ずつ、3時間目までありました。

各授業では、「講演は極力手短に」という阪本校長の指示のもと、それぞれ15〜20分の講演に続いて、質問コーナーにたっぷり時間が費やされました。講演では、「あかつき」が撮影した地球と月の画像や、「IKAROS」の「自分撮り」画像、「はやぶさ」地球帰還の動画など、聴衆の視覚に訴える資料が用いられました。各探査機の名前の由来についての質問がお約束のように相次ぎ、二度目三度目になると会場は笑いに包まれました。「あかつき」が向かう金星の想像を絶する大気現象や表面環境は大いに関心を集めており、「あかつき」のミッション範囲外ではあるものの金星への着陸探査に関する質問が相次ぎました。「はやぶさ」の影響もあってか、話は金星表面からのサンプルリターンにまで及び、津田・西山の両名が工学の立場からその難しさを説明しました。「IKAROS」については、ソーラー電力セイルの将来構想図と膜の形がなぜ違うのかという専門的な質問が出て、観測ロケットによる実験以来の膜の形の変遷の詳細が説明されました。「はやぶさ」については、講演で触れなかったイオンエンジンの仕組みや、スペースシャトルで小惑星探査ができるのか、といった質問が出ました。三つの深宇宙探査機についてのQ&Aを通して、光速で進む電波の往復時間で議論するような探査機と地球との間のスケールの大きな距離感を会場で共有することができたのではないかと思います。

子どもが主たる対象とはいえ、大人を含む熱烈な宇宙ファンの皆さんからの質問は講師陣をたじたじとさせる迫力があり、宇宙学校初参加の私にとっては新鮮な経験でした。会場となった駒場キャンパス13号館1323教室は学生時代から数えてかれこれ20年ぶりであったことや、小学生の娘を連れていって自分たちの授業を受けさせることができたことから、公私ともに充実した思い出深い祝日となりました。

(西山和孝)

入場者数は過去最大の415名

11月28日(日)に郡山市ふれあい科学館スペースパークにて、「宇宙学校・こおりやま」が開催されました。科学館では、11月に宇宙ステーションをテーマにした企画展「ようこそ宇宙ステーションへ!」を開催していたので、宇宙学校の授業も日本実験棟「きぼう」についてと、話題の小惑星探査機「はやぶさ」について行われました。JAXAからは国際宇宙ステーション科学プロジェクト室長の高柳昌弘先生、宇宙科学研究所月・惑星研究系で「はやぶさ」プロジェクトチームの一員の岡田達明先生、そして校長として阪本成一先生にお越しいただきました。

今回の宇宙学校は大好評で、定員を超える120名の方にお集まりいただきました。学校が始まる前から子どもたちはどんな話が聞けるのか、そして先生にどんな質問をしようかと、すでにヒートアップの状態でした。授業中も必死にメモを取る姿も見られ、質問コーナーではものすごい勢いで手が挙がり、先生たちもビックリの様子。帽子を振ったり、立ち上がったり、ジャンプしたり!などと、先生に当ててもらうために自分のアピール合戦が始まるほど。このような質問の嵐にも、先生方は一つひとつ丁寧に、分かりやすく答えてくださいました。特に多かったのは、宇宙に行くと体や物質の状態がどう変化するのか、という質問や、「はやぶさ」に関しての質問でした。「宇宙ステーションのような大きなものをどうやって宇宙に運んだのですか?」という子どもの質問に、「みんなの汗と努力です」という答えには、大人の方からも拍手が起きました(もちろん後から先生はきちんと回答してくれました)。

このように、普段は宇宙開発の最前線で活躍されている先生方と、宇宙について本当に楽しく学ぶことができました。参加された皆さんには貴重な経験になったと思います。先生方と開催に至るまでお世話をしていただいたJAXAの皆さんにあらためてお礼を申し上げます。今回はすてきな授業をありがとうございました。

(郡山市ふれあい科学館・水谷有宏)

講師の話に聞き入る郡山の子どもたち