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ISASニュース

次世代赤外線天文衛星SPICA日欧会議

No.357(2010年12月)掲載

天文学の究極の目的は「我々はなぜ、かく在るのか?」という問いに答えることです。銀河はどうやって誕生したのか(銀河誕生のドラマ)。太陽系のような惑星系は、何を原料に、どういうプロセスで形成されるのか(惑星系のレシピ)。そして、我々は宇宙でひとりぼっちなのか……。

これらの問いに応えるべく、私たちは、次世代赤外線天文衛星SPICA(Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics)計画を推進しています。SPICAには、口径3.2mという大型の望遠鏡を搭載し、絶対温度で6K(マイナス267℃)という極低温にまで冷却して観測を行います。それにより、従来にない圧倒的な高感度・高空間分解能の観測が可能となります。SPICAは、宇宙論から太陽系外の惑星探査まで、天文学・宇宙物理学の幅広い分野に大きなインパクトを与えると期待されています。

SPICAは、日本が主導し、世界の多くの国が参加して進められる国際協力ミッションです。特に欧州はSPICAに強い興味を示し、ESAの宇宙科学長期計画であるCosmic Vision の枠組みの中で、SPICAへの参加が議論されてきています。

欧州のSPICAへの貢献の1つの大きな軸は、観測装置の1つであるSAFARI (SPICA Far-Infrared Instrument)の開発です。これは、欧州を中心とする14ヶ国からなるコンソーシアム(中心機関はオランダ宇宙研究機関SRON)により進められています。SAFARIは、SPICAの最も得意とする遠赤外線領域をカバーするものであり、最重要観測機器の1つです。

このSAFARIと衛星システムとのインターフェースを調整する会議が11月4、5日に宇宙科学研究所において行われました。欧州からは20名の科学者・技術者が来日しました。日本の参加者も含めると、大きな会議室でも席が足りなくなるほどで、2日間にわたって活発な議論が行われました。

国際協力ミッションですので、共通の言葉は英語になります。しかし、「英語を母国語とする参加者」は、実はごく少数でした。日本語をはじめとして、オランダ語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語……と、いろいろな言葉のなまりのある英語が飛び交う会議でした。

日欧のメンバーの固い協力のもと、2018年度の打上げを目指して、SPICA計画を進めています。

(中川貴雄)

会議での議論の様子