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ISASニュース

「あかり」プロトモデル、名古屋市科学館での展示へ

No.357(2010年12月)掲載

赤外線天文衛星「あかり」の真空冷却容器プロトモデル(地上試験用モデル)が、名古屋市科学館で長期展示されることになり、10月14日に名古屋へ輸送されました。「あかり」は赤外線で宇宙を観測し、暗黒星雲中で生まれたばかりの星や、生涯を終えて死にゆく星、あるいは銀河の中での星形成活動の歴史などを追い掛けています。有効口径68.5cmの天体望遠鏡は、それ自身が赤外線を放射して観測を邪魔しないよう、超流動液体ヘリウムタンクを備えた真空冷却容器に納められ、マイナス267℃の極低温に冷却されました。この冷却容器のプロトモデルが展示されるのです。

このプロトモデルは外見も機能も実際に打ち上げられたものとほとんど変わらず、超流動液体ヘリウムを注入して内部を冷却することができます。これが地上で冷却性能の確認に使われたのはもちろんですが、「あかり」開発の終盤に、望遠鏡主鏡の取り付け部に問題が発覚したときにも大活躍してくれました。問題が見つかった望遠鏡は設計が見直され、改修が行われました。そして極低温での振動試験にかけ、打上げの振動や衝撃に耐えられるか確認が必要でした。内部をマイナス267℃の極低温に冷やすことができて、しかも過酷な振動試験にも耐えられる容器は、「あかり」自身以外にありません。そこで、望遠鏡はこの冷却容器プロトモデルに納められ振動試験にかけられたのです。それも何度も、でした。このおかげで「あかり」は無事に打ち上げられ、成果を出すことができました。

「あかり」冷却容器プロトモデルが展示されることになった名古屋市科学館では、最近新しい展示館が完成し、来春の開館に向けて展示準備が進んでいます。冷却容器プロトモデルが展示されるのは、世界最大となる直径35mのプラネタリウムドームの真下の展示室とのことです。冷却容器プロトモデルにとっては2回目の晴れ舞台となります。

(村上 浩)

名古屋市科学館への輸送のためトラックに積み込まれる「あかり」真空冷却容器プロトモデル