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ISASニュース

太陽物理の難問題解決に向けて 第4回「ひので」国際シンポジウム

No.356(2010年11月)掲載

今回で4回目となる「ひので」国際シンポジウムは、イタリアが音頭を取ってシシリア島にあるパレルモで開催されました。10月11〜15日の合計5日間にわたりHotel la Torreにて、参加者総勢180名前後を集め、成功裏に終了しました。開催された場所の雰囲気が良かったのか、それとも温暖な気候のためか、参加者は皆、夜遅くまでシンポジウム会場の前の海の見えるバルコニーで活発に議論を行っていました。

2006年打上げの太陽観測衛星「ひので」が観測を始めて、今年で4年がたちました。「ひので」はそれまでとは別次元の空間スケールで連続観測を続けてきた結果、“非常に活動的な彩層”“プロミネンスの微細渦構造”など、さまざまな新しい太陽の素顔を明らかにしてきました。それと同時に、これまで見えなかったものが見えるようになったことによって、我々が想定していなかった新たな問題も多数浮上してきました。そこで今回のシンポジウムでは“unsolved problems and recent insights”という副題で、「ひので」により何がどこまで解明されたか、またどこが解明されていない大事な点なのかを明確にし、今後どういった「ひので」による観測、またはほかの衛星や地上の望遠鏡との連携観測を行うべきか、などの議論が活発に行われました。「ひので」研究も初期の発見学問的な段階から、天体プラズマの詳細研究の段階に入り、今が最も熟した状態であると感じました。そのため、基調講演や招待講演に使う時間をこれまでよりも長めに取るという試みもされました。

今回のシンポジウムでは、Solar Dynamics Observatory(SDO)、SUNRISEなど、「ひので」より後に観測を始めた衛星または気球観測との共同観測に関する講演が多数あり、「ひので」とほかの望遠鏡との連携観測により、新たな太陽観測の時代が到来しそうな印象を受けました。今後も、唯一無二の武器である高空間分解能での連続観測という特徴を生かして、「ひので」による太陽研究はますます発展していくと期待しています。

(今田晋亮)

シンポジウム会場のバルコニーにて