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ISASニュース

ESAにおけるBepiColombo MMOの熱試験

No.356(2010年11月)掲載

水星探査計画BepiColomboのMMO(水星磁気圏探査機)にとって、熱・構造モデル単体としての一連の試験の最後であり、一番の難関でもある10太陽光強度(10SC)下における熱モデル試験が、10月5〜15日にESA(欧州宇宙機関)のESTEC(欧州宇宙研究技術センター)にある施設(LSS:大型熱真空試験装置)で行われました。この試験は、今年の2〜3月に予定されていたものが、ほかのプロジェクトとの競合から延び延びになっていたものです。

MMO熱モデルは9月中旬にESAへと搬入され、試験の準備作業を行った後、10月5日から試験を開始しました。ESA側の設備として10太陽光強度が出せるように改修した後の最初のユーザーによる試験ということで、供試体からのアウトガスに対してかなり神経質になっていました。試験前確認審査まで熱モデルからのアウトガスに関して議論が続き、試験を開始できるかやきもきしましたが、何とか予定通りに試験をすることができました。10SCの太陽光強度を出すために平行光ではなく7度程度の集光光になっているため、実際より厳しい試験となりますが、何とか乗り切ることができました。

写真は、真空引きを開始する前に擬似太陽光に対しての位置確認などを目的としてランプを1灯だけ点灯し、MMO熱モデルを回転させたときに撮影されたものです(10SC時は19灯を点灯)。このときの明るさはMMO熱モデルの位置で1/4SCでしたので、実際の試験では強度にしてこの40倍(!)の光にさらされたことになります。試験終了後の18日から概観チェックを始め、21日には試験後のデータレビューを行いました。小さな問題はいくつか出ましたが、施設の運転を任されているメーカー(ETS)の関係者、ESAの関係者、日本の試験メンバーの協力のもと、大きな問題はなく無事終了することができました。試験の関係者、裏方として試験を支えてくださった方々すべての協力に、この場を借りてお礼を申し上げます。

MMO熱モデルは12月にMMOのためのサンシールド(MOSIF)と組み合わせた10SC試験を引き続き行い、来年初頭にいったん日本へ戻し構造モデルへと変更した後、再度ESA/ESTECへと輸送され、全体スタック(MCS)の機械環境試験へと供されます。

(早川 基)

スピンしているMMO熱モデルと真空引き前の疑似太陽光ランプの確認試験
©Photo ESA/JAXA A. Le Floc'h