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ISASニュース

「はやぶさ2」スタート準備完了

No.356(2010年11月)掲載

2010年は感動的な地球帰還で小惑星探査機「はやぶさ」が注目されましたが、その陰では「はやぶさ2」の検討も着々と進められていました。そもそも「はやぶさ2」は、すでに2006年に提案されています。これは、2005年に「はやぶさ」が小惑星イトカワで予定通りの表面物質採取ができなかったことを受けて、確実に小惑星の表面物質を採取して地球に持ち帰るべく提案されたものでした。2011年打上げの提案でしたが、予算がつかなかったため、現在では2014年(バックアップが2015年)のウインドウに打ち上げることを想定しています。

「はやぶさ2」も「はやぶさ」と同様な小惑星サンプルリターンのミッションですが、「はやぶさ2」では、その科学(サイエンス)にもかなり重点が置かれています。ですから、探査する小惑星はミッションの科学目標に合致したものである必要があります。現在のターゲットは、1999 JU3という小惑星で、これはC型に分類される小惑星です。C型の小惑星は、地球に隕石として落ちてきている炭素質コンドライトの母天体と考えられており、その表面物質には有機物や水が含まれていると考えられています。「はやぶさ2」は、地球にある水や、生命をつくっている有機物の起源にも迫ろうというミッションなのです。

「はやぶさ2」は、基本的には「はやぶさ」がやったことを踏襲しますが、新しい試みとして“衝突装置”を搭載していき、人工的なクレーターをつくることも計画しています。人工クレーター内部からの物質採取ができれば、表面だけでなく地下の物質も手に入れることができるのです。そのほか、一部の観測装置は「はやぶさ」から変更するなど、「はやぶさ」の経験をフルに活かして、より確実にミッションを行うことを目指しています。現在の計画では、小惑星到着が2018年、地球帰還が2020年末です。

「はやぶさ2」は、2009年末にJAXA内での審査であるシステム要求審査(SRR)が終了し、2010年8月には宇宙開発委員会の審査で了承されました。そして、2011年度からプロジェクトとして開始できるように、「元気な日本復活特別枠」に予算要求がなされ、現在(2010年11月初め)はその結果を待っているところです。10年後の夢のために、ぜひ、ミッションがスタートできることを願っています。

(吉川真)

人工的につくられたクレーターにタッチダウンする「はやぶさ2」