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ISASニュース

小型科学衛星2号機候補、内部磁気圏探査計画(ERG)

No.347(2010年2月)掲載

内部磁気圏探査計画(ERG:Energization and Radiation in Geospace)は、今太陽活動極大期(2013〜2014年ごろ)においての「ジオスペース」観測を目指し、5年ほど前から若手研究者を中心に検討されてきました。「ジオスペース」とは、地球周辺の宇宙空間のことです。ジオスペースは、放射線帯も含め6桁以上のエネルギー幅を持ったプラズマ・粒子が共存し、大規模なエネルギー解放現象である宇宙嵐に伴って相対論的高エネルギー電子が誕生するなど、非常にダイナミックに変動する領域です。現象が起きている「ジオスペース赤道面付近」での粒子・電磁場・波動の統合観測はこれまで実現しておらず、放射線帯の加速変動メカニズムについては諸説並立の状態にあります。提案されている諸説を検証し、実証的に変動メカニズムを解明していくために、大規模な宇宙嵐が多発すると予測される今太陽活動極大期に向けて、放射線帯の中心部を含むジオスペース赤道面における粒子・電磁場・波動の統合観測の実現を目指すのが、小型科学衛星のERGです。

では、なぜ小型科学衛星なのでしょうか?
小型科学衛星は、打上げまでの開発期間が短くて済みます。2013〜2014年ごろと予想される今太陽活動極大期を狙ってタイムリーに打ち上げることによって、国際競争力を持った衛星を実現することを目指したかったからです。さらに、本計画はジオスペースの環境予測を目指す「宇宙天気」研究に観測的・理論的な基礎を提供し、実証的な粒子加速機構の理解を通じて、人類の宇宙での安全・安心な活動にも貢献していきたいと考えています。

2009年夏に小型科学衛星2号機候補として宇宙科学研究本部で選定され、現在は衛星ミッション部の基本設計を実施し、ERGプロジェクトとしての立ち上げを進めています。穏やかだった太陽活動も、フレアが起こり始め活動が活発化してきています。今太陽極大期での観測実現に向けて、ERG提案者一丸となって全力を尽くしていきます。

(高島 健)

内部磁気圏探査計画(ERG)