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ISASニュース

君も太陽系をヨットに乗って旅しよう!

No.347(2010年2月)掲載

2009年11月初頭に組み上がった小型ソーラー電力セイル実証機IKAROS(イカロス)は、その後、初期電気試験、熱真空試験、振動試験を終了し、1月下旬から、いよいよ最終電気試験に突入しました。最終電気試験では、運用を極力模擬した試験を行います。IKAROSは、4つのミッションを順番に進めていくように運用します。

最初のミッションは、セイル(帆)の展開です。IKAROSの本体は円筒形で、この側面に差し渡し20mの正方形のセイルを巻き付けてあります。IKAROSはスピンによる遠心力でセイルを展開します。セイル展開の様子は複数のカメラによって確認します。それ以外に、スピンレート、セイルの温度、遠心力の変化からもセイルの展開を確認できます。第2のミッションは、薄膜太陽電池による発電です。薄膜太陽電池はセイルに貼り付けてあり、セイルを展開すれば発電を確認できます。その後も定期的に発電状況を確認し、薄膜太陽電池の性能を評価します。これら2つのミッションは打上げ後1ヶ月程度で完了し、この段階でミニマムサクセスに到達したといえますが、そこからが本番です。

第3のミッションはソーラーセイルによる加速実証です。IKAROSのセイルが太陽光を受けると、0.1g(1円玉0.1個分)の力となります。力は弱くても常に光を受けるため、軌道が徐々に変化することがはっきりと分かるはずです。そして、最後のミッションはソーラーセイルによる軌道制御です。セイルの角度を変えれば、太陽光から受ける力の向きが変わり、軌道を調整できます。このミッションで軌道制御に必要な一連の技術を習得します。半年後には、これらを達成し、フルサクセスとなります。IKAROSの成功は、約100年間、絵空事でしかなかったソーラーセイルにとって、実用化という新たな幕開けを意味します。

IKAROS出航に向け、ソーラーセイルキャンペーンを実施しています。ホームページで皆さんからお名前とメッセージを募集し、皆さんの代わりにIKAROSに乗船していただきます(新しいウィンドウが開きます http://www.jspec.jaxa.jp/ikaros_cam/j/index.html)。携帯サイトからもエントリーできます。また、団体受け付けも行っています。締め切りは3月14日ですが、2月28日までに個人で応募していただいた場合、特別席も用意されます。世界初のソーラーセイルの運航は、きっと素晴らしいものになるでしょう。「君も太陽系をヨットに乗って旅しよう!」。皆さまの応募をお待ちしています。

(森 治)

IKAROSによる世界初のソーラーセイルミッション