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ISASニュース

太陽から惑星間空間の新描像−第3回「ひので」国際シンポジウム−

No.346(2010年1月)掲載

2006年9月23日(土)の飛翔以来、はや3年の歳月が流れた。Xバンド受信の不具合は、JAXA・ESA・NASAの協力により、Sバンドダウンリンク局を最大限確保し、サイエンスへの影響を最小限に食い止めている。その努力も実り、太陽観測衛星「ひので」の鮮明な画像(可視光・X線)、磁場データ、紫外線スペクトルは、相変わらず世界を席巻している。

国際「ひので」科学会議という名称を冠したシンポジウムも今回で3回目を迎えた。第1回目は英国が音頭を取ってアイルランドの首都ダブリン市で、第2回目は2008年米国コロラド州ボルダー市で、いずれも世界の研究者200名前後を集めて成功裏に開催されたが、今回は満を持しての東京開催である。2009年11月30日〜12月4日の1週間を使って学術総合センター・一橋記念講堂において開催されたこの国際シンポジウムは、中国・インドを含むアジアの研究者も初めて数多く参加し、参加総数は200名を優に超えるところとなった。

『PASJ』(日本天文学会欧文研究報告誌)特集号、『Science』特集(いずれも2007年)、『Astronomy & Astrophysics』特集(2008年)の初期成果を踏まえ、「ひので」のデータを用いる研究は、光球下から太陽風・惑星間空間までの幅広い天体プラズマを対象として、詳細研究の段階に入ってきている。静穏領域にダイナミックに現れる水平磁場やプロミネンス・黒点内のプラズマの微細で複雑な運動、これまで時間的にも空間的にも分解できていなかったスピキュールの振る舞いや活動領域磁気ループの足元に局在化して見られる超過輝線幅など、「ひので」がそのミッション目的としているコロナ加熱や太陽大気の磁気的な結合・エネルギー輸送の機構解明に迫りつつあるとの感を強くした。

また複数の「ひので」搭載望遠鏡を用いた研究や、HOP(Hinode Observation Proposal)と呼ばれる地上太陽望遠鏡やほかの太陽観測衛星・ロケット・気球などとの共同観測による成果などが数多く紹介されたのも、今回のシンポジウムの大きな特徴ということができよう。

設計軌道寿命の3年は過ぎたが、第24太陽活動周期の立ち上がりは依然遅れており、来るべき極大期に備えて「ひので」の観測性能を維持して万全の観測体制を継続したいものだと意を新たにした。

(国立天文台・渡邊鉄哉)

若手の口頭発表は好評を博した。