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ISASニュース

小型ロケットによる微小重力実験をESAと共同で実施

No.346(2010年1月)掲載

2009年11月22日、スウェーデン・キルナ郊外のスウェーデン宇宙公社エスレンジ射場から、微小重力実験用小型ロケットTEXUS 46号機が打ち上げられました。TEXUS 46号機には、JAXAが開発した燃焼実験モジュール(JCM)がほかの相乗りペイロード1個とともに搭載され、約6分間の微小重力時間を利用した燃焼実験(PHOENIX)が行われました。

今回の実験は、宇宙環境利用科学委員会による支援を受け活動中の「液滴群燃焼ダイナミクス研究ワーキンググループ」と、ESAの支援を受け活動している欧州の燃焼研究グループ「CPSチーム」の研究協力をもとに、JAXAとESAの国際共同ミッションとして実施されました。日欧研究者チームの実験要求をもとにした実験計画の作成とJCMの開発をJAXAが、TEXUSロケットによるフライト実験機会の確保をESAが行うという役割分担で、準備が進められてきました。

PHOENIXは、燃焼機器で広く用いられている、燃料を霧状にして燃焼させるときの火炎伝播メカニズムの解明を目指した基礎実験です。現象を単純化して火炎伝播メカニズムの理解を図るため、燃料噴霧のモデル系として燃料液滴列を用い、液滴列に沿って伝播する火炎の構造、火炎伝播速度、および燃焼生成物である窒素酸化物(NOx)濃度などに与える燃料予蒸発進行度の影響を明らかにすることを目的としています。

フライト中の実験機器の操作は、ブロックハウスに入った3名の実験運用チームがリアルタイムダウンリンクされた画像データ・テレメトリを確認しつつ、テレコマンドにより行いました。今回の打上げキャンペーンでは気象条件がなかなか整わず、1週間にわたる計6回のカウントダウンでようやく打上げ実施に至ったという経緯もあり、打上げ時の実験チームは“緊張感”よりも“よし、いくぞ!”という雰囲気が勝っていたように思います。

ロケットの飛行およびJCMを含むペイロード部の回収は順調に行われ、目的とした実験データは無事取得できました。本実験で得られた貴重なデータについては日欧研究者チームにより今後詳細に解析を行い、論文として公表していく予定です。

最後に、本ロケット実験の成功に当たり、これまでご支援、ご協力いただいたすべての方々に、この場を借りて深くお礼させていただきます。

(菊池政雄)

射点から打上げ直後のTEXUS46号機。2009年11月22日12時15分(現地時間)。
(写真:ESA/SSC/Astrium)