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ISASニュース

BepiColombo/MMO熱モデル試験

No.346(2010年1月)掲載

2009年11月5日から12月11日まで、筑波総合環境試験棟の直径13mスペースチャンバにて、水星探査機BepiColombo/MMOの熱モデル試験を実施しました。MMO は水星周回軌道上において、最大で地球近傍の10倍の強度の太陽光にさらされるため、太陽光の影響を正確に評価する必要があります。そのために本試験ではソーラシミュレータを使用しました。またMMOはスピン衛星なので、供試体支持装置(TFX)を使用し、スピンを模擬した試験を行いました。今回の試験では模擬太陽光強度を設備限界の1.8kW/m2まで上げ、また4日間にわたって供試体を回転させ続けました。こういった特殊な運用は設備にとって初めてだったそうですが、まったく問題なく試験を続けることができました。供試体もヒータ断線や熱電対のはがれなど計測欠損はまったくなく、試験も予定通りで、すべてのデータを問題なく取得することができました。また試験後の外観検査でも問題はありませんでした。設備関係の皆さま、メーカー関係の皆さまに、この場をお借りしてお礼申し上げます。

スペースチャンバ内でソーラシミュレータに照射されスピンしている状態がチャンバ窓から観察できましたが、その様子は水星軌道上の状態を容易に想像できる、とても美しく印象的なものでした。

本試験には宇宙科学研究本部熱グループに全面的に協力いただきました。熱グループの若い方々に熱試験に参加していただき、観察や記録、データ整理をしていただきました。科学衛星で、筑波の施設を使用してソーラシミュレータを用いた試験は初めてです。その意味で、かなり貴重な経験が得られたと思います。得られた経験や知識や人脈を、それぞれの今後の業務に生かしていただけるものと期待しています。

MMO熱モデルは今回の試験結果を評価した後、2月に宇宙科学研究本部でのIR(赤外加熱法)試験、7月にESA(欧州宇宙機関)での10ソーラ(地球近傍の10倍の太陽光)試験に供され、熱設計検証と熱数学モデルの検証を行っていきます。

(小川博之)

スペースチャンバ内のBepiColombo/MMO熱モデル(中央右寄り奥)