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宇宙科学の最前線

宇宙構造物の面形状を格子投影法で測る 室蘭工業大学 もの創造系領域 教授 樋口 健

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 人工衛星の開発には、大型化・多機能化の歴史とともに、開発期間短縮やリスク分散や低コストを狙った小型化・高機能化の趨勢がある。小型衛星や小型搭載機器でできるものは、小型化する方がよい。しかし、寸法が大きいことが必要とされる用途も依然として存在する。例えば、小型携帯端末のような地上局アンテナの小型化のための衛星搭載アンテナの大型化や、天文観測衛星搭載望遠鏡の大口径化や、大電力発電のための太陽電池の大面積化などである。一方、輸送手段にはペイロードの重量と寸法の制約があり、大型ロケットを使ったとしても上限があるため、宇宙大型構造物はおのずと小さく折り畳んだ状態で輸送手段に搭載して打ち上げられ、宇宙空間で展開・伸展する展開構造物にならざるを得ない。また、小型ロケットを利用したり大型ロケットでも同時複数打上げしたりする方がコストを抑えられると考えられるため、衛星小型化の趨勢の中では、ますます高効率に収納できかつ軽量な宇宙展開構造物が要求されている。したがって、これら展開構造物の構成要素についても、板状構造要素を機構で展開・保持する方式から、軽量でかつ収納性の良い膜やケーブルを張力で安定化させる方式へと進んできた(図1、2)。

図1
図1 衛星搭載メッシュアンテナの地上試験用φ1500mm縮小モデル


図2
図2 膜面を用いた小型ソーラーセイル実証機IKAROSのセイル展開状態写真


 宇宙構造物は、打上げ時の過酷な振動や負荷を経た後は、宇宙空間では膜やケーブルなど剛性の低い柔軟構造要素でも何らかの張力を作用させることにより形状を保持できる。そのため、地上では実用が難しい柔軟な構造形態であっても宇宙空間では使用可能であることが多く、したがって構造形態の発想の自由度が大きい(図2、3)。しかし、地上では実用が難しい構造形態であるということは、地上で十分な事前検証を経ることが難しいということを意味する。例えば、重力も大気もある地上試験における柔軟構造物の展開挙動観察により軌道上の展開挙動を予測することは、十分な工学知識と観察眼と想像力をもってしてもいまだ不十分である。

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図3 フィルムに太陽電池を貼りびょうぶ状に折り畳み展開する方式を用いたフレキシブル太陽電池アレイを搭載した宇宙実験・観測フリーフライヤ(SFU)の展開状態写真


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