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宇宙科学の最前線

JAXA長期ビジョンと宇宙科学

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表紙

 「JAXA長期ビジョン」は平成17年(2005年)4月6日に公開された。JAXAウェブサイトの長期ビジョンのページ (http://www.jaxa.jp/missions/plan/long_term/index_j.html) に直接入るか,トップページ (http://www.jaxa.jp/index_j.html) からJAXA長期ビジョンという項目を選ぶと,概要と本文,参考資料をダウンロードすることができる。併せて,長期ビジョン完成時に制作された8分にわたるイメージビデオも見ることができる。

 このイメージビデオは,JAXA長期ビジョンの実現が人々の生活をどう変えるのかを,20年後の二人の高校生(はるかと星児)の1日を通じて描いている。議論もあろうが,夢を語るという観点ではきれいに仕上がっていて,楽しいビデオである。ちなみに,星児くんは遠くの惑星を目指したいと語り,はるかちゃんは第二の地球の発見にチャレンジしたいと語っている。このビデオが描く20年後からさらに15年後,今年あたり入った若い助手さんや技術職員の方が定年になるころ,この二人はJAXA,多分その中でも宇宙科学研究本部の研究者として彼らの夢の実現を目指していることだろう。

 さて,長期ビジョン検討委員会(委員長:間宮馨JAXA副理事長)とそのもとに組織された作業チームが昨年9月に発足してから,半年間の集中作業を経て,宇宙開発委員会への報告とその後の記者会見をもってJAXA長期ビジョン作成作業は終了した。直接作業に携わった私たちだけでなく,多くの方の手を煩わせて,JAXAウェブサイトにある最終形となった。問題山積み,総花的,インパクトがない,など厳しい意見がある一方,半年間の議論を通して見えてきたことも少なくない。以下,JAXA長期ビジョンの宇宙科学の関連記述を中心に紹介し,最後に多少のコメントを添えさせていただくことにする。さらなる前向きな議論の材料となってもらえれば幸いである。



長期ビジョンはJAXAが考える「我が国が進むべき道」

 まず,JAXA長期ビジョンに関して数点明確にしておきたい。そのために,本論第2章の書き出しを以下に示す。
――既述の理念に基づき,おおよそ20年後までの間の我が国の宇宙開発利用及び航空研究開発の望ましい姿としての長期ビジョンを以下のように提案する。――

 すなわち,JAXA長期ビジョンは,宇宙開発利用および航空研究開発において,JAXAが考える「我が国が進むべき道」を示したものである。実施主体は必ずしもJAXAである必要はなく,JAXAは「この提案に基づく明確な目標のもとに(自らが何をなすべきかを考え)選択と集中を図り,これを効果的・効率的に推進する」立場にある。分野によっては実施主体がJAXA自身であるものも少なくなく,ロードマップの記述では「JAXA」が主語である部分も少なくない。また,主語が不明確な文章が混在しているなど反省点もあるが,この長期ビジョンがJAXA活動のみを示したものだ,というのは誤解である。

 予算規模は,およそ現在の2倍程度までと設定されている。宇宙開発・航空研究への理解が高まれば,そのくらいの増額は起こり得る(起きてほしい)という想定である。さらなる予算規模を必要とする再使用輸送系や有人飛行などは,「今後10年間の実績を踏まえて国としての判断を仰ぐ」という記述になった。判断の先送りという批判があるが,決して間違った手法ではないと考える。良かったかどうかは,今後の10年間に既存の研究をどうシフトし,一つのベクトルに向けていくのかにかかっており,JAXA経営のいかんに委ねられたことになる。



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