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宇宙科学の最前線

太陽コロナ〜活動・加熱の源を求めて〜

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衛星と地上との共同観測

 X線コロナの観測は,「ようこう」など飛翔体からしかできません。一方,太陽表面の磁場の観測は主に可視光域の吸収線を観測するので,地上の天文台でも観測可能です。そこで,地上の望遠鏡と「ようこう」などの衛星で同時に同じ領域・同じ現象をとらえる共同観測が,国内外を問わず盛んに行われています。図4は,このような共同観測で得られた成果の一つで,小さな磁場が太陽面下から浮上した直後にマイクロフレアを引き起こす現場をとらえた観測です。


図4
図4 小さな磁場の浮上活動がマイクロフレアを引き起こした現場


 コロナ加熱・活動を,秒角を切るスケール(サブ秒角)の磁気要素の活動と関係付けることが重要なので,可視光観測には高い解像度を必要とします。地上観測においてもこの10年,大気の揺らぎの少ない観測サイトでの観測や揺らぎを補償する技術の導入などで,スナップショットでは高解像度の画像がまれに得られつつあります。筆者もついこの前,7月上旬に,大気揺らぎが小さいスペイン・カナリー諸島にある天文台で国際共同観測を行いましたが,瞬間的な解像度の改善には目を見張るものがありました。しかし,コロナのダイナミックな活動や加熱を研究する上では,サブ秒角で安定して連続的に磁場の変化を精度よくとらえることが必須で,地上観測では大きな限界となっています。


期待されるSOLAR-B衛星の活躍

図5
図5 2006年度に打上げ予定のSOLAR-B衛星


 そこで,SOLAR-B衛星の登場が切り札になると期待しています。SOLAR-B(図5)はコロナと下層大気との磁気カップリングの解明を重要な研究テーマの一つとして計画され,コロナの観測と太陽表面の磁場の観測を同時に行うべく,三つの特徴的な望遠鏡を搭載しています。コロナの観測はX線望遠鏡(XRT)と極端紫外線分光撮像装置(EIS)が担当し,太陽表面の観測は可視光望遠鏡(SOT)が担当します。SOTは口径50cmの可視光望遠鏡で,0.2〜0.3秒角の解像能力を持ちます。太陽観測を目的とした軌道上望遠鏡としては,世界一の大きさの口径を持つ宇宙望遠鏡となります。観測機能としては,ダイナミックな時間変化をとらえるためのフィルタ撮像装置と,磁場など物理量を詳細に調べるためのストークス・ポラリメータ(偏光測定用分光器)を持っています。

 現在までに搭載望遠鏡の開発はほぼ終わり,衛星としての最終総合試験が始まりました。2006年度予定の打上げが成功して,望遠鏡が革新的な観測データを取得し,太陽物理学や関連学問分野に大きな衝撃を与えてくれるものと,今からわくわくしております。そのため万事を成すべく,試験への力も入ります。

(しみず・としふみ)



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