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宇宙科学の最前線

太陽コロナ〜活動・加熱の源を求めて〜

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コロナ加熱・活動の源

図2
図2 太陽表面の拡大写真。無数のセル構造が粒状斑と呼ばれる約1秒角の大きさの対流構造,小さな白い輝点構造が微細磁束管,黒い構造が黒点。スウェーデン王立天文台望遠鏡撮影。


 コロナ加熱や活動の根本的な源は,コロナよりも下層にある太陽表面(光球)および光球面下の対流層にあると考えています。光球では対流によるガスの激しい運動が起きており(図2),表面から生える磁力線が激しい対流運動によってねじられたり混合されたりすると想像します。その結果,磁力線で磁気流体波が励起されたり,もしくは上空のコロナで磁力線がごちゃごちゃになり,多数の不連続面が形成される可能性が考えられます。このあたりの理解が,コロナ加熱の謎を解くカギを与えるものと考えています。

 加熱されるコロナループと,ループの磁力線が根付く表面における磁場の運動や様子を対応付けて詳しく観測できれば,加熱における物理過程の理解が大きく進むものと期待されます。ところがやっかいなことに,ある程度の太さを持つコロナループでも光球面では100km程度の大きさしかない磁力線の束に収縮しているため,角分解能が〜0.2秒角程度の観測が必須となってきます。この収縮した束は微細磁束管と呼ばれ,1.3キロガウス程度に強められた磁場となっています。



太陽面磁場の観測

 表面磁場の測定には通常,ゼーマン効果を利用します。磁場のある大気から発せられる,または透過する光は,磁場の影響を受けて偏光します。スペクトル線を見ると,磁場のないとき1本であった吸収線は,磁場があると何本にも分かれます。分離の仕方や偏光の度合いを測定することによって,磁場の大きさや向きを推定することができます。観測としては,遅延板と偏光板を用いて,偏光成分を表すストークス・ベクトル(Stokes I,Q,U,V)を測定します。Q成分とU成分は直線偏光,V成分は円偏光の様子を表します。図3は,磁場に感度を持つ2本の吸収線をスペクトルとして測定した例です。

図3
図3 太陽吸収線の偏光観測の一例


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