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宇宙科学の最前線

「ロケットの次のゴール」または「詐欺師ペテン師の世界」

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 有人ロケットを作るには初めから一般の人とはいきませんから,まずはテストパイロットからになるだろうと,アンケートをしてみました。日本の航空機パイロットサークルの日本航空協会の皆さんと一緒にやりました。アンケートは,有人ロケットを設計するのに世間の狭いロケット屋では気付かない視点があるのでは,という動機で,乗るための条件や必要な安全装備などを聞き,面白い発見がいろいろありました。恐る恐る,上のような有人ロケット実験機ができたら搭乗したいと思いますかという質問もしました。実はこの調査はスペースシャトル・コロンビア号が墜落した直後になってしまい,「ロケットになんか誰も乗りたくない」と言われたらどうしようと心配したのですが,日本中の50人のテストパイロットの人たちが協力してくれて,結果は図3のようになりました。

図3
図3 有人弾道ロケット実験機への搭乗希望


 世の中,20世紀から21世紀になったのは,ほんの4年ほど前のことでした。次の100年や次のミレニアムが始まる,と少しは盛り上がった技術革新の予測や実現し得る未来の議論は,まったくしぼんでしまいました。21世紀はまだ96年もあるというのに,正月が済んだら今年の抱負もクソもなくなったのと同じです。「再使用」が真の意味で役に立っている世界は今の状態から比べるととんでもない世界だ,と分かります。一足飛びにこの状態にはたどり着けないのは当然ですが,どうやったらできるかを考えるのは,とても楽しい仕事の類なのだと思います。何十年とか百年のスパンであれば,もっとアグレッシブでないといけないかとも思います。攻め口はいろいろあると思います。皆さんはどう思いますか?

 ある日の長友先生との会話。
「うーん,こういうロケットを作ったら年収1兆円か。金出す人が出てきたらどうしよう」
……
「先生,なかなか誰も何も言ってきませんね」
「そーか,こっちから金集めでもするか」
「集めてできなかったらどうします?」
「詐欺師ペテン師の仲間入りだな。おれはもう辞めるから,あとお前やれ……」

(いなたに・よしふみ)



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