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宇宙科学の最前線

宇宙開発における標準化と情報化 〜Faster Better Cheaperを実現する方法〜

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情報化とは,すなわちモデル化

 さて,先ほど後回しにした「衛星に関する情報をデータとして表現する標準的な方法」について説明します。これは,分かりやすく言うと,衛星に関する情報を表すためのモデルを作るということです。簡単な例を図3に示します。これは搭載機器の例ですが,このような表を標準テンプレートとしてあらゆる衛星のあらゆる搭載機器に標準的に適用するわけです。図3の右側の空欄に,搭載機器ごとの値を入れるのです。

 しかしながら,実際のモデルとしては,このような単純な表だけでは不十分です。衛星の中で搭載機器がどのように接続されているのか(機構的に,あるいは電気的に)というトポロジー情報,搭載機器の内部状態が時間的にどのように変化し得るのか(地上からの指令に対して,あるいは搭載機器内での事象の発生に対して)という時間遷移情報等々,さまざまな情報を表すことのできる複雑なモデルが必要です。しかし,複雑なモデルの説明を限られた誌面の中で行うのは困難ですので,ここではこの程度の説明でご容赦ください。

 さらに将来は,今までとまったく異なる構成の衛星も出現するでしょうから,そのような場合にモデルをゼロから作り直さなくてもいいようにするために,モデルを定義するためのモデルも作っておけば鬼に金棒です。モデルを定義するためのモデルは,メタモデルといいます。私は宇宙用のモデルとメタモデルの双方を構築するための研究をアメリカとヨーロッパの研究者と共同で行っています。



図3
図3 搭載機器に関するモデルの例


FBCは本当に可能?

 標準化と情報化によってFBCを実現する方法を説明してきました。後者の情報化に関する研究は宇宙分野では2年前に始まったばかりであり,これが実用化されるのは数年後になると思います。実用化されれば,多少はFBCに貢献できると思います。今はまだ研究の初期ですので,先に述べたアイディアが重要な段階です。私はこれからもアイディアを重視した研究を続けたいと思いますので,ご支援をよろしくお願いいたします。

(やまだ・たかひろ)



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