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宇宙科学の最前線

多様化するミッションに向けた蓄電技術

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今後の展開

 地球から離れた場所で電気を必要とする宇宙機は,いろいろな電池を工夫して使用しながら歴史を刻んできました。当面は,リチウムイオン二次電池をいかに使いこなすかが,宇宙用電源技術としては大切な研究になると考えます。また,燃料電池技術を習熟させ,さらには宇宙機の大型化に対しては,水の電気分解装置と組み合わせた再生型燃料電池が適用される時期がくることと思います。

 それでは,電池以外の蓄電システムはないのか。これも重要なテーマです。その一例が電気二重層キャパシタです。電極表面の電気二重層領域に電気を蓄える装置で,電池に比べると急速充電や急速放電が可能なほか,二次電池の10倍から100倍以上の充放電回数に耐え得ると考えられています。これが将来の宇宙機を支える技術として成熟するかどうか,現在研究を開始しています。

 ほかの技術同様,宇宙機に搭載する蓄電システムも万能というものはありません。時代とともに廃れる技術もあれば,新技術として期待されつつ実用化に問題を抱えることもあるでしょう。しかし,電気がなければ電子機器を動かすことができない以上,進歩し続けることを期待される分野の一つであると考えます。

(そね・よしつぐ)


追悼

 宇宙航空研究開発機構総合技術研究本部エレクトロニクス技術グループ長 桑島三郎氏が,去る2004年9月15日に逝去されました。氏は生涯を宇宙用電池の研究開発に捧げ,宇宙機基盤技術としての電源系技術の発展に貢献されました。教えを受けた一人として,ここに哀悼の意を表するとともに,心からご冥福をお祈り申し上げます。

 桑島さん,後のことは心配でしょうが,どうかお任せください。心安らかに,宇宙から見守ってください。



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