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ISASコラム

(第4回:ISASニュース 2013年6月 No.387掲載)

補助固体推進系の領収試験が終了

イプシロンロケット初号機の打上げまで残すところ約3ヶ月。固体推進系について、打上げ前最後の燃焼試験が行われました。

今回の試験は2種類のモータの領収試験です。領収試験では、イプシロンロケットに用いるフライト品と同時にまったく同じ仕様、材料で製造されたもう1基のモータを燃焼させて、製品の出来上がりの機能と性能を確認します。

まず、固体推進系で唯一新規に開発された、固体モータサイドジェット(SMSJ)の試験が、5月14日にIHIエアロスペースの富岡事業所で行われました。SMSJは、1段モータ燃焼中の機体軸まわりの回転(ロール)および1段モータ燃焼終了後切り離しまでの機体の飛行姿勢を制御するための小型の固体モータです。1段モータ後部の外壁上の対称位置に2基装備され、発射10秒前に点火された後、1段分離まで約3分間燃焼し続けます。

続いて翌5月15日には、宇宙研のあきる野実験施設でスピンモータ(SPM)の領収試験を行いました。SPMは第2段の機器搭載部に2基搭載され、2段モータ燃焼終了後にネズミ花火のように燃焼して、分離前の第3段をスピンさせます。このスピンにより、3段モータ燃焼中の第3段は、推力方向や重心位置のわずかな誤差のためらせん状の飛跡を描きながら目標軌道に向かうのです。

SPMは宇宙空間で点火されるので、1/30気圧以下の低圧環境をつくり出せる特殊な高空性能試験設備を用いて燃焼させました。初号機打上げ前の最後の地上燃焼試験となり、プレッシャーも格別でしたが、イプシロンを紹介するテレビ取材が入ったことにより良い意味での緊張感が高まりました。試験メンバーの動作がいつも以上にキビキビしているように感じられたのは私だけでしょうか?

テストスタンドにセットされたイプシロンロケット用スピンモータ(SPM)

2つのモータの領収試験が成功裏に終了して、イプシロン固体推進系の準備はすべて整いました。すでに5月20日から種子島で1段モータの組立てが始まっています。これから続々と内之浦に機体部品が搬入されて、本稿が出るころには内之浦での各段組立ての作業がスタートしているでしょう。8月22日のカウントダウンに向けて着実に打上げ準備が進んでいるところです。(徳留真一郎)

※打上げは8月27日に延期になりました。

イプシロンロケットへの応援メッセージ

マーキングデザインが施されたイプシロンロケット

JAXAは4月10日から5月7日まで、新型固体ロケット「イプシロン」への応援メッセージを募集しました。応募総数は5812件で、英語のメッセージが452件ありました。応募いただいたメッセージは機体のマーキングデザインの中に書き込まれます。5月21日に正式発表されたイプシロンロケットの機体のマーキングデザインには、宇宙研の固体ロケット伝統の赤帯があしらわれています。文字はこの赤帯の部分に数mmサイズの白文字で記載する計画です。機体の近くに寄るとその文字は読み取れますが、遠くから見るとデザインと一体化して赤帯の中に溶け込む仕掛けです。

機体のマーキングはイプシロンの第1段ロケットにだけ施されます。その第1段ロケットは、間もなく内之浦宇宙空間観測所のM台地に搬入される予定です。おそらく過去搬入されたロケットモータの中でも今回のものは最大級ではないかと思います。M-Vロケットの場合は、第1段ロケットが2つのセグメントで構成されていたので、40トンクラスのロケットモータの「部品」が港から山の上の射場に搬入されていました。一方、イプシロンの場合は第1段が一塊となっていて、しかも充填薬量が65トンと大きいため、搬入作業はかなり手間がかかるかもしれません。ロケットモータをM台地に搬入後、整備作業中か、それを終えたところでマーキング施工作業に入る見込みです。

皆さまのメッセージがきちんと機体に搭載されるように、現地での作業を見守りたいと思います。最初の報道公開の際には、ぜひとも念入りにご確認ください。(羽生宏人)

※メッセージ当選結果と掲載位置は以下のページから確認できます。
新しいウィンドウが開きます イプシロンロケット応援メッセージ大募集