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ISASコラム

(第3回:ISASニュース 2013年5月 No.386掲載)

フェアリング分離放てき試験

ほぼ連載のようになっていたイプシロンロケット構造系開発試験の紹介ですが、おそらく、これが最後になると思います。今回は最後を飾るにふさわしい、派手な試験を紹介します。

3月末から4月上旬にかけて、兵庫県播磨にあるフェアリング開発メーカーの工場にて実施したフェアリングPM(試験モデル)分離放てき試験です。フェアリングの役割は、第1回で紹介したので省略しますが、フェアリングの重要な機能として、役割を終えたらロケット本体から分離される必要があります。その際、ロケットや内部に搭載された衛星に迷惑を掛けないように、フェアリングは半分に割れて外側に倒れます。その姿が貝殻(クラムシェル)に似ているので、クラムシェル開頭方式と呼びます。

今回の試験は、フェアリングがクラムシェルのようにきれいに分離されることと、分離時に発生する衝撃レベルの確認を主目的として実施したものです。同行したカメラマンが珍しいアングルから試験の様子を撮影してくれたので、その連続写真を掲載します。試験の結果、非常にきれいに開頭し、衝撃レベルも想定内に収まっていることが確認され、大成功に終わりました。

フェアリング分離放てき試験の様子

試験に使った試験モデルは射場でのロケット組立て練習に使うため、内之浦へ輸送しました。そして、実際に打ち上げる試験機用フェアリングは組立ての最終段階で、5月中旬の出荷を待っています。5月で構造系の大きな開発試験はほとんど終わり、6月から舞台はいよいよ内之浦に移ります。皆さま、これからも応援よろしくお願い致します。(宇井恭一)

イプシロンロケットのマーキングデザイン

2012年の11月ごろ、イプシロンロケットプロジェクトの井元隆行氏より次のような依頼がありました。「機体のマーキングのデザインを考えてもらえませんか」と。一瞬「ん??」でしたが、そのときは「分かりました。やってみます」とあまり深く考えずに返事をしてしまいました。

引き受けたのはよいものの、さて何から始めたものやら……。これは重たい仕事を引き受けてしまったと後悔しつつも、まずは前向きにイメージを膨らませようということで、記憶をたどることにしました。幸いM-Vロケットの組立てやフライトオペレーションに加わっていた経験があるので、現場の様子や機体を整備塔から出すとき(ランチャ出し)の光景が記憶に鮮明に残っています。そこで、まずはしっかりと思い出し、それらを下敷きに不鮮明ながらも湧いてきた機体イメージを重ねるような作業(といっても常に空想)をしばらく続けることにしました。そしてようやく出てきたのが、図のようなデザインです。

デザインの解説をします。まず下部の赤とグレー帯はお約束です。機体全長がM-Vより少し短くなるので、公開されている初期イメージより下側に帯を配置して機体全長が短くなった感じを抑えました。ノズル側から機軸方向に延びる太い赤線は、M-Vまで続いてきた固体ロケットシリーズの重厚な歴史を表し、これがイプシロン(EPSILON)に継承されていることを意味します。EPSILONの文字から頭胴部に延びる線は、この歴史から技術的なシフトがある(一段上がる)ことを意味して上側に配置しており、線が少し細くなっているのは、新型ロケットとしてスリム化(低コスト化)したことを表しています。細い線の方が長くなっているのは、機体全体が機軸方向に伸びやかな印象となる効果を考えてのことですが、今後も末永くこの活動が続くことへの願いが込められています。星印は、このロケットが将来、惑星探査ミッションの打上げを狙っている意志表示です。アルファベットの I のところに入れることで宇宙研(ISAS)との関係も意識しました。EPSILONの字体については遠くからも見やすいゴシック体を使うべきとのベテランの方の意見もいただきましたが、私は全体にシャープなデザインにしたかったので、あえて異なるものを選びました(グッズ販売も意識して?)。

気持ちを込めてロケットのデザインをしてみました。皆さん、いかがでしょうか?(羽生宏人)