超音速バックステップ剥離流れの研究
研究申込者
北川 幸樹(ISAS/JAXA)
研究要旨
HU-A6号機の打ち上げ失敗のおもな原因は,局所アブレーションであると考えられている.局所アブレーションとは,化学的腐食,機械的侵食,及び,流体現象等の重畳によって局所的に焼損速度が加速される現象である.その要因には,以下のようなことが挙げられる.ノズル内壁に使用されている二種類の熱防御材の焼損速度が異なるために,その境目で周方向に段差が形成される.この段差下流では,曲率を持って流れることによる遠心力不安定の結果,G rtler渦に類似した縦渦列構造が見られる.この縦渦現象によって,壁面熱流束の増大と物質輸送の促進によって化学的腐食が増大する.このことが局所アブレーションの一因であると考えられている.これらの要因のうち,本研究では,縦渦現象に起因する壁面熱流束の増大に着目して,超音速バックステップ剥離実験を行うことで段差下流での縦渦現象の壁面熱流束に対する影響を明らかにすることを目的とする.なお,実際のロケットノズルは周方向に曲率を持っているが,今回の実験では過去のデータとの比較のために曲率を持たないバックステップ模型(Fig.1)を用いた.TSP(Temperature Sensitive Paint,感温塗料)を用いて計測された壁面温度分布(Fig.2)の時間履歴データより熱流束を評価した結果,熱流束のカラーコンター上で流れ方向に筋状の模様(Fig.3)をとらえることができた.この結果は,過去のGinoux等の実験結果(1960年) と比較することによって縦渦によるものであることが確認できた.
Fig.1. 観測窓から観た供試体
Fig.2. Mach数2.5,総圧250kPa,模型初期温度21.7℃,温度レンジ4℃〜22℃,
段差上流アルミテープ有,通風約12秒後の温度分布画像
Fig.3. Mach数2.5,総圧250kPa,熱流束レンジ-0.4kW/m2〜0.4kW/m2,
段差上流アルミテープ有,通風約12秒後熱流束分布画像
Key words
Backstep,Longitudinal vortex, Nozzle ablation,TSP
2010年度の研究成果
- 梶貴行(東海大学・工・学),平岡克己(東海大学),北川幸樹(ISAS/JAXA),石向桂一(ARD/JAXA),永井大樹(東北大学),中北和之(ARD/JAXA),西潟一樹(東北大学・工・学),嶋田徹(ISAS/JAXA), ロケットノズル・スロート下流段差を模擬した超音速バックステップ剥離流れの研究 , 平成22年度宇宙輸送シンポジウム,宇宙科学研究所,2011
- 石向桂一(ARD/JAXA),梶貴行(東海大学・工・学),北川幸樹(ISAS/JAXA), 嶋田徹(ISAS/JAXA), 風洞実験との比較による超音速はく離流れにおける高次精度非定常流解析コードの検証, 平成22年度宇宙輸送シンポジウム,宇宙科学研究所,2011
利用期間
2010年10月25日〜2010年10月29日