超音速領域における感圧塗料を用いたデルタ翼模型の空気力計測

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研究申込者

藤井 孝藏 ( ISAS/JAXA )

Abstract

 後期の実験とあわせ,遷・超音速風洞を用いて,丸い前縁を持つデルタ翼(図1)のまわりの流れに与える一様流マッハ数および迎角の効果に関する実験解析を行った.今回,本研究で取り扱った一様流マッハ数の範囲は0.7-3.2であり,デルタ翼上面流れに与える影響を感圧塗料とオイルフローを用いて調べた. WoodとMillerの分類図では一様流マッハ数と迎角により一意的に流れ構造が決定されていたが,2つの異なる流れ構造が混在する遷移領域を確認した.迎角10°の場合,M=0.6-1.2の領域では翼先端ではなくコード方向に途中の位置から剥離渦が発生し,翼上流側では全面付着流れ,翼後流側では1次渦と2次渦が発生する剥離流れとなることを確認した(図2)。そしてM=1.2〜2.4の領域では,翼先端から剥離渦が生じ、翼全面で剥離流れとなることが分かった(図3).更に一様流マッハ数が高いM>2.4では,翼先端から剥離渦が発生する一方で,翼後流側では流れの再付着に伴って衝撃波が発生するといった2つ流れ構造が混在することがわかった(図4).なお,一様流マッハ数の増加に伴い,遷音速領域で生じた剥離渦の発生点は後流から上流へ移動し,また超音速で発生した付着流れの発生点も後流から上流へと移動することがわかった(図5). 迎角を10°から4°に変えた場合も,10° の場合と同様に,翼弦方向に2つの異なる流れ場が混在する領域が確認されたが,流れは付着しやすくなるため剥離渦の発生が抑えられることが分かった(図6). これまで行われてきた研究では主にコード方向に対する任意断面内の流れ構造に対して解析され,そして分類図が作られてきた.しかし,本研究を通して前縁の丸いデルタ翼に対しては,流れの3次元性も加味することが重要であることが明らかになった。


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図1.実験に用いたデルタ翼模型
図2.翼上面圧力分布と推測される流れ場構造
   (マッハ数0.7,迎角10度)          .


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図3.翼上面圧力分布,オイルフローおよび
    推測される流れ場構造         .
   (マッハ数1.6,迎角10度)        .
図4.翼上面圧力分布,オイルフローおよび推測される
    流れ場構造 (マッハ数2.6,迎角10度)      .


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図5.流れ場構造に与えるマッハ数の効果
図6.流れ場構造に与える迎角の効果


Key words

デルタ翼,マッハ数効果,迎角効果,感圧塗料(PSP),オイルフロー

2006年度の研究成果

網谷 修男 (工学院大院), 伊藤 巨l (青学大院), 今井 源太 (東大院),藤井 孝蔵 (JAXA), 大山 聖 (JAXA), 飯田 明由 (工学院大),   ” デルタ翼流れに対する一様流マッハ数効果に関する実験 ”,  平成18年度宇宙航行の力学シンポジウム,  相模原,  2006.

利用期間

平成18年6月19日〜6月30日
平成18年10月2日〜10月6日