「ぎんが」衛星のデータを用いて中性子星の質量と半径を求めよう


1. はじめに

1.1 学習課題

「ぎんが」衛星に搭載された大面積比例計数管(LAC)のデータを用いて、奇妙な天体、「中性子星」の質量と半径を求めてみましょう。その過程で、万有引力と光の運動量、黒体放射について学習してみましょう。

1.2 予備知識

Windows のパソコンの使い方、およびEXCEL の使い方はある程度知っているものとします。

1.3 利用する環境

ツール データ

1.4 関連天体

X線バースター・中性子星 X1608-522
低質量連星系・中性子星 X1608-522

1.5 課題作成

作成者 更新日
沢田紗枝子、岩本ひとみ、北本俊二 2008-02-25〜2010-01-23

1.6 参考資料

本課題の理解を助けるための資料を用意しました。

2. 中性子星について

2.1.高密度天体

この章は小山勝二・嶺重慎、2007年、『ブラックホールと高エネルギー現象』を参考にまとめたものです。

2.1.1.恒星の進化

恒星が進化の跡にどのような高密度天体を残すかは、恒星の質量によって決まります。 簡単な星の進化の様子を下の図に示します。

太陽質量の約0.46倍までの恒星は赤色矮星とも呼ばれ、 温度が低いためヘリウムには点火せず、水素を使い尽くした後はそのままヘリウム型の白色矮星になります。太陽質量の約 0.46倍から約8倍までの恒星では、中心で水素を使い果たした後でヘリウムに点火し炭素・酸素・窒素が作られるが、それ以上の反応は進まず、赤色巨星の段階を経て白色矮星となります。 太陽質量の8〜10倍の質量を持つ恒星では炭素・酸素からなる中心核でさらに核融合反応が起こり、酸素やネオン・マグネシウムからなる核が作られます。この段階で核は縮退す るため、電子の縮退圧で重力を支えるようになり、この核の周囲の球殻状の部分で炭素燃焼が進むという構造になります。核を取り巻く部分で起こる核反応の 「灰」によって次第に核の質量が増えていきますが、やがて中心核を構成する原子内で、陽子が電子を捕獲して中性子に変わった方がエネルギー的に安定になる ようになります。これによって中心核は中性子が過剰な原子核で埋め尽くされるようになります。一方で電子捕獲によって電子の縮退圧が弱まるため、重力を支 えられなくなって星全体が急激な収縮を始めます。中心核の収縮は、密度が十分大きくなって中性子の縮退圧で重力を支えるようになると停止します。これよ り上の層は核によって激しく跳ね返されて衝撃波が発生し、一気に吹き飛ばされます。この段階を超新星爆発と呼びます。爆発の後には中性子からなる高密度の 核が残り、これが中性子星となります。

 太陽質量の10 倍以上の大質量星では、次々に重い元素に点火してはさらに重い元素が作られ、最終的に鉄の中心核が作られる段階まで核反応が進みます。鉄原子は原子核の結 合エネルギーが最も大きいためにこれ以上の核融合は起こらず、中心の熱源がなくなるために鉄の中心核は重力収縮しながら温度を上げていきます。温度が約 100 億度に達すると鉄が光子を吸収してヘリウムに分解する鉄の光分解という吸熱反応が起きて急激に圧力を失います。これによって重力を支えられなくなり、星全 体が重力崩壊で潰れて超新星爆発を起こします。爆発の後には爆縮された芯が残ります。残った芯の質量が太陽の2-3 倍程度なら中性子星として残りますが、それ以上ならば重力崩壊が止まることなくブラックホールになります。超新星爆発の前段階でどういった条件ならばどの くらいの芯の質量が残り、その結果中性子星になるか、あるいはブラックホールになるかといった精密な条件は現在ではあまりはっきりしていませんが、太陽質 量の30 倍以上の恒星はほぼブラックホールになると考えられています。

2.1.2.白色矮星

白色矮星は太陽質量の4倍以下の星がエネルギー源である水素を消費して、星の重力を支えるガス圧を失い収縮したものです。星の重力を支える力は電子 の縮退圧で、星の大きさは1万km程です。連星系を構成する白色矮星で伴星から質量降着がある場合は、白色矮星の周囲に降着円盤が構成されています。 この降着円盤や白色矮星表面で可視光や紫外線で光ります。降着物質の量が変化すると変光星として観測されることになります。

 白色矮星の中には、102〜105T (テスラ) の強い磁場を持つものがあり、降着流は磁極へ落下します。このとき磁極で衝撃波が発生して、X 線を放出する高温のガスが生成されます。X線の強度は中性子星やブラックホールに比べて小さいものです。

2.1.3.中性子星

中性子星とは、質量の大きな恒星の一生の最後である超新星爆発によって生まれる、主として中性子が非常に密に集まってできている星のことです。中性子星は質量が太陽程度、半径は10km 程度、大気の厚さは1m 程度で、密度は太陽の密度の1014 倍以上もあります。中性子星は大質量の恒星の超新星爆発によってその中心核が形成されますが、中性子星として存在できる質量には上限があり、それを超えるとブラックホールになります。上限の質量は太陽質量の1.5 倍から2.5 倍の範囲にあります。重力とつりあっているのは、恒星の場合のガス圧ではなく、中性子の縮退圧という量子力学的つりあいです。

 X 線を放射する中性子星のほとんどは、中性子と恒星の連星系です。恒星が放出するガスの一部は恒星の重力圏を越えて、中性子星の重力圏に流れ込みます。この ガスは連星系の回転により、渦巻状に回転しながら中性子星へ落下します。ガスは中性子星に近づく程速度が速くなり、温度も上がって、ガス同士が衝突して高 温ガスとなります。このガスからX 線が放射されます。

2.1.4.ブラックホール

 ブラックホールの定義は、内部で発生した光が外部へ達することが出来ない特殊な空間のことで、アインシュタインの重力方程式の解として存在します。ブ ラックホールを観測する直接的な方法はありませんが、現在連星周期からケプラーの法則を用いて推定されるX 線星の質量が太陽質量の3倍より大きい天体をブラックホール候補星と呼んでいます。

 ブラックホールも連星系の場合には、伴星からの降着で周囲に高温の降着円盤を構成し、これがX線を放射します。X線のエネルギースペクトルは中性子星と同じように黒体放射型のものや、べき関数型のものがあります。

2.2.中性子星

この章は、柴崎徳明、1993年、『中性子星とパルサー』を参考にまとめたものです。

2.2.1.中性子星の構造

以下の図に示す中性子星のいくつかの特徴的な層を、外側から説明します。各層はおおよそ密度によって分けられています。

表面層

表面層は密度が109kgm-3以下の領域で、温度や磁場によって固体または液体状態となっています。

アウタークラスト

表面層の下にある層で、およそ数百mの厚さがあります。密度は109〜4.3×1014gm-3 です。この領域では鉄やニッケルなどの原子核が格子状に並び、個体となっています。規則的に並んだ原子核は、縮退した電子の海の中に浸っています。密度が1010gm-3 を超えると、電子のフェルミエネルギーは1MeV 以上となります。すると原子核中の陽子は電子を捕獲し、中性子に変わります。  密度が高くなるにつれて電子捕獲がより進み、中性子過剰の原子核ができます。さらに密度が高くなるにつれて、表面エネルギーが少なくてすむ格子の多い原 子核が安定になります。このような原子核は地球上では非常に短時間で崩壊してしまいますが、中性子星内部では非常に圧力が高いために安定して存在できま す。

インナークラスト

およそ1kmの厚さで、ρ0=2.8×105kgm−3 を標準原子核密度とすると、密度は0.5ρ0 より小さいです。自由中性子や中性子過剰な原子核が、縮退した電子の海の中に格子状に並んで存在しています。また、この領域では中性子を原子核の中に束縛 しておくことができず、中性子の一部が原子核からもれ出てきます。もれ出た中性子は超流動状態、つまり粘り気がなくなり、さらさらと流れる超流体をなって います。この領域には原子核と自由電子と自由中性子が存在します。

アウターコア

密度はおよそ0.5〜2ρ0 であり、数km の厚さです。原子核はすべて溶けてしまい、そこは超流動状態にある自由な中性子で占められています。数パーセントの電子・ミューオンなどの荷電粒子と、超伝導状態の陽子も含まれています。これらは強く縮退しています。

インナーコア

数km 程度の厚さで、構成するものに対してはいろいろな仮説により異なります。密度は2ρ0 より大きく、中心部の密度は極めて高く、10〜15ρ0 にも達します。

2.2.2.中性子星におけるX線発生の仕組み

我々の銀河系にはX線を多量に放射する天体(X線星)が数百個ほど存在します。X 線を放射する中性子星のほとんどは、中性子と恒星の連星系でです。相手の星から中性子星に質量が降着すると重力エネルギーを開放してX線を放射します。したがってX線連星系ともいいます。X 線発生の仕組みを、中性子星の連星系の場合を例に説明します。

中性子星の相手の星(伴星)が進化し膨張すると、その星の外層はその重力圏から溢れ、その一部は、中性子星の重力圏に流れ込みます。流れ込んだ物質は角運 動量を持っているので、中性子星の周りに降着円盤と呼ばれるガスの円盤を作ります。この降着円盤の中では、内部の物質ほど速い角速度で運動しているので、 内側と外側の物質の間に摩擦力が働きます。この摩擦で角運動量を失いながら、物質はらせん状に中性子星に向かって落ちていきます。

中性子星の磁場が強いときは、プラズマである降着円盤のガスは磁場によってせき止められ、その後磁力線に沿って流れ、磁極付近に集められます。磁極 付近に落ち込んだ物質は、中性子星の表面近くで莫大なエネルギーを解放し、X 線を放出します。2 つの磁極を結ぶ線が自転軸と一致していない場合、中性子星が高速で自転していれば、X 線が放出する方向を変えながら放たれるので、放射は中性子星の自転に伴って、観測者からは両極のプラズマの柱が交互に見えることになり、X線パルサーとし て観測されることになります。中性子星の磁場が弱いときは、降着円盤は中性子星の表面近くまで侵入します。物質は中性子星の表面の広い範囲に落ち込みま す。中性子星の表面に蓄積した降着物質は、密度と温度が核融合の条件を満たす状態になると爆発的な核融合を起こし、高温ガスを生成してX 線を放射することがあります。また、摩擦で高温になった降着円盤からもX 線が放出されます。降着円盤は中性子星の近くで膨れ、熱いプラズマ雲ができます。


           磁場が強い場合の物質の流れ

            磁場が弱い場合の物質の流れ

3. 「ぎんが」衛星

「ぎんが」衛星は、1987年に打ち上げられた、X線による天体観測のために人工 衛星です。1991年まで活躍しました。4000 cmもの面積を持つ大面積比例計数 管を主力観測装置として、中性子星やブラックホールの観測でも多くの業績を残 しています。この教材では、この「ぎんが」衛星のデータを用います。詳しくは

 3.1.「ぎんが」衛星

 3.2. 機体データ

 3.3.「ぎんが」が残した成果

を読んでください。

4.中性子星の質量を求めてみよう

4.1.エディントン限界光度と質量の求め方

 星はガスのかたまりですが、その星を構成するガス、あるいは、星の外にあるガスは重力(万有引力)(内向きの力)で束縛されています。しかし、星 は光を出すので、ガスには弾き飛ばそうとする力(放射圧;外向きの力)も働きます。この重力と光により吹き飛ばそうとする力が釣り合う時の星の明るさをエ ディントンの限界光度といいます。放射圧とは、ガスが光から運動量をもらって弾き飛ばされる力のことです。ガスは主に水素ガスです。水素ガスは電子をひと つ持っていて、その電子が光に弾き飛ばされます。光から見ると電子は面積が近似的にある値、、程度に見えます。このをトムソン散乱断面積と呼びます。一方エネルギーがの光はの運動量を持ちます。ここで、cは光の速度です。

 

 問題1. の単位はどうなるでしょうか?

   星からの光度(毎秒あたりの放射エネルギー)をとすると、星の中心からの位置には単位面積あたりのエネルギーがやってきます。従ってのエネルギーの光が水素原子の電子をはじき飛ばします。その時平均的に光が持っている運動量を水素原子に渡してしまうとすると、毎秒あたりの運動量を水素原子が貰うことになります。光は星から平均的に放射状に出ているので、運動量も放射状です。すなわち水素ガスが光から受ける力(放射圧)は

で、これは、星から見て放射状に弾き飛ばす力となります。

 一方、水素原子の質量は、ほぼ陽子の質量,,です。星の質量をとすると、星の中心から半径の位置にある水素ガスが受ける重力(万有引力)は

で、星に引き付けられる方向に働きます。放射圧が大変強くなると、重力と放射圧が吊り合う場合があります。その時の星の光度をとすると、

という関係が成り立ちます。このをエディントンの限界光度といいます。ここで、,c、は重力定数、光速、トムソン散乱断面積、,,,は星の質量、陽子の質量、星から水素ガスまでの距離です。エディントンの限界光度は星が安定的に放射できる最大限の大きさです。書き直すと

となります。

 この関係を逆に用いると、エディントンの限界光度が分かれば中性子星の質量が求められるということになります。

4.2.「ぎんが」衛星のデータを見てみよう

  小質量連星系で X線バーストを起こす有名な天体でX1608−522という天体があります。X線バーストを起こす天体をX線バースターと呼びます。「ぎんが」衛星で取得した、このX1608−522というX線バースターのエネルギースペクトルをEXCELのワークシートとして書いたデータをX1608-522_steady.xclにおきました。クリックしてどこかに保存して下さい。その後、保存したファイルを開いてみましょう。 なお、X1608-522_steady.xcl という名前の "steady" というのは、この天体はX線バーストを起こすのですが、起こしていないところ、すなわち定常な(steady)状態のデータという意味です。

 まずデータを確認します。 データシートの下にあるタブが「X1608-522 data」となっていることを確認して下さい。そうでなければ、そのタブをクリックして、「X1608-522 data」のシートを表示してください。まずデータの意味を理解しましょう。このデータは、エネルギースペクトルといって、天体からやってきたX線光子1 個1個のエネルギーを測定し、どのエネルギーにどれくらいたくさんのX線がやってきたかを示しています。エネルギーをここでは12の領域(エネルギーバン ドといいます)に分類しています。分類の仕方をB列とC列で表しています。 B列は各エネルギー領域の中心のエネルギーで、C列はその領域の幅の半分を表 しています。4行目から15行目までが12個のエネルギーバンドのデータを表しています。たとえば、4行目は1.15keVを中心に幅の半分が 1.15keVの領域であることを示しています。すなわち0keV から2.3keVということです。

問題2.5行目のバンドのエネルギー範囲はどこからどこまでですか?

 D列は、各行のエネルギーバンドにはいるX線が1秒当たり、1mあたり、それから1keVあたりに、平均幾つやってきた か示しています。1keVあたりにしているのは、次の理由によります。たとえば12行目から15行目のC列に注目してください。エネルギーバンドの幅が5 から11行目に比べて2倍、広くなっています。天体の明るさが同じでも、広いエネルギー範囲のエネルギーバンドにはたくさんのX線がやってきます。逆に、 狭いエネルギーバンドの間にはあまりX線はやってきません。そのように、エネルギー範囲により違いをなくすために、データは1keVあたりとしています。 また、ここに示したデータは、実際に得られるデータとは少し異なり、検出器(大面積比例計数管)の特性等による効果は補正してあります。

 次にグラフを見てみましょう。データシートの下にあるタブの「X1608-522 Spectrum」のタブをクリックして、そのシートを表示してください。横軸がエネルギーで縦軸が各エネルギービンに毎秒、1mあ たり、1keVのエネルギー範囲あたりいくつのX線がやってきたのかを示しています。各データ点の横の線はエネルギーバンドの範囲を表しています。このグ ラフでは縦軸も横軸も対数で表しています。これが、「ぎんが」衛星の大面積比例計数管で測定して求めた、X1608−522という天体からのX線のエネル ギースペクトルです。

4.3.エネルギーフラックスを求めよう

 さて、中性子星の質量を求めるためには、まずエネルギーフラックスを求める ことが必要です。エネルギーフラックスとは観測装置1 m2当たりに1秒間に通過 する光子のエネルギーのことです。フラックスの単位は、[keV/sec/m2] です。

 X1608-522のX線のエネルギースペクトルは、いろいろなエネルギーバンドでの1keV当たり1mあたりに毎秒通過する光子の数([Photons/keV/sec/m2])を示しています。このデータを使えばすぐに、観測範囲内のフラックスは求められます。EXCELを使って実際に行ってみましょう。

 まず、各エネルギービン毎のエネルギーフラックスを求めてみましょう。まずはデータシートの下にあるタブの「X1608-522 data」のタブをクリックして、そのシートを表示してください。C列の「1mあたり1keVあたり毎秒の平均X線の数」に、B列の「X線のエネルギーのほぼ平均である各ビンの中心エネルギー」を掛け、さらに、D列の2倍の「エネルギー範囲の幅」を掛ければ、各エネルギービン毎の「1 m2当たりに1秒間に通過する光子のエネルギー」となります。

 そこで、   
1. 4行目E列に  =D4*B4*C4*2 と入れてみましょう。そうすれば、計算できます。   
2. 次は、この4行目E列を5行目から。。。15行目までコピーしましょう。これで、全12のバンドで各エネルギーバンド毎のエネルギーフラックスが計算できました。   
3. ここで、忘れないようにE行2列に内容が分かる説明、たとえば「毎秒1mあたりのエネルギーバンド毎のエネルギー」を、それかE行3列には単位を、たとえば「keV/sec/m2/エネルギーバンド」と書きましょう。   
4. あとは全部のエネルギーバンドの合計をつくればよいですね。E列16行に =sum(E4:E15) と入れてみてください。これで、「ぎんが」衛星の大面積比例計数管で観測した、全エネルギーバンドの合計の毎秒1mあたりのエネルギーが求められます。   
5. 最後に E列16行 の説明として C列16行に「合計(keV/m2/sec)」と書いておきましょう。

  ここでは、E列16行に「ぎんが」衛星の大面積比例計数管で観測した、全エネルギーバンドの合計の毎秒1mあたりのエ ネルギーを求めました。実際は観測していない範囲があるので全エネルギーではないのですが、X1608−522という天体は主に、この求めたエネルギー範 囲でエネルギーを放射しているので、比較的よい近似となっています。ここでは、全エネルギー範囲で積分した物と考え、単位も「keV/m2」としました。

 次に、エネルギーの単位をkeV から Jに変換しましょう。 1keV は 約1.6×10-16 J です。EXCELに戻って D列18行にその値を書き込んでありますので、E列18行に  =E16*D18 と打ち込めば エネルギーフラックスを J/sec/m2 または W/m2 で求めることができました。

 

4.4中性子星の光度と質量の下限

まず、求めたエネルギーフラックスから中性子星の光度を求めてみましょう。光度とは、中性子星が1秒間あたりに放出するエネルギーのことです。ここで衛星とX1608-52の距離をと書くとしましょう。そうすると、フラックスと光度の関係はです。

 しかし、衛星とX1608-52の距離はよく分かっていません。これまでの観測からX1608-52は銀河中心あたりで、およそ8kpc程度であると考えられています。この「kpc」というのは「キロパーセク」と読みます。天文学でよく使われる距離の単位です。1kpcはおよそ3.1×1019[m]です。

 先ほど4.3章でX1608-52のエネルギーフラックスを E列18行に求めました。

 B列19行に推定距離の8[kpc]を、D列19行に書いてあるkpcからmへの換算の3.1×1019[m/kpc]を使って、E列19行に[m]で表した距離を求めましょう。E列19行に  =B19*D19 と代入してください。

 次に光度をE列20行に  =E18*4*pi()*E19^2 と代入すれば光度が出ます。ここで「pi()」というのは、「π」、すなわち「3.141592..」.の事です。

 問題3, 光度の単位はどうなるでしょうか?

  最後に忘れないように、F列18行から20行まで、単位を書き込んでください。

さて、光度を求めることができたなら、あとは計算をするだけで中性子星の質量の下限値が求まります。4.1.エディントン限界光度と質量の求め方 で調べたように、重力と放射圧が釣り合う場合、

となります。そこから、エディントンの限界光度、、は

と表すことができます。この関係を変形すれば、中性子星の質量

となり、計算だけで求めることができます。計算に必要な定数を以下の表に示します。

以上の定数を式に当てはめると

となり、簡単に計算できることになります。ここで、の単位は J/s または W です。

 しかし、4.3で求めた光度は、エディントンの限界光度よりは低い光度であるはずで、ではありません。求めた光度をの代わりに使って求められる中性子星の質量は実際の中性子星の質量より小さくなるはずです。つまり中性子星の質量の下限値が求められることになります。

 では、実際にX1608-522の中性子星の質量の下限値を求めてみましょう。D列21行の換算量0.16を使って、E列21行に =E20*D21 を代入すると[kg]の単位で質量の下限値を求めることができます。  

 問題 4  求めた中性子星の質量を、太陽質量と比較をしてみましょう。太陽質量Moは Mo=1.99×1030 [kg] です。

 こうして求めた、X1608-52の質量の下限値は太陽に比べてずいぶん小さくなると思います。X1608-52の明るさは変動するので、もっと明るい ときのデータを使えば、より大きな下限値が決まり、中性子星の本当の質量に近づきます。たとえば、X線バーストの時はもっと明るいので、より大きな下限値 が求められるでしょう。

 この解析で求めた光度は、エディントンの限界光度よりは低いので、そこから求められた中性子星の質量も、実際の質量よりは必ず小さな値になるとい うことに加えて、この方法で中性子星の質量を求める事について、注意しなければならない点が幾つかあります。本来であればエネルギー範囲をゼロから無限大 まで積分すべきですが、エネルギー範囲を「ぎんが」衛星の大面積比例計数管が観測した範囲(およそ1〜30[keV])に限って解析したこともまた、中性 子星の質量を小さく求めることの原因になります。また、星間吸収を考慮していない点も中性子星の質量を小さく求めることの要因となります。中性子星から放 出されたX線のいくつかは、検出器にたどり着くまでに星間ガス等により吸収され、検出器にたどり着く時のX線の数は、放出されたときのX線の数より少なく なっているはずだからです。

 つまり、

  * エディントンリミット(限界光度)の近くまで光度が大きくなっているときのデータを用いること
  * エネルギーを無限大まで考慮すること
  * 星間吸収を考慮すること

で、より大きな質量の下限値が求められるということです。

5.中性子星の半径を求めてみよう

5.1.序章

 次は、中性子星の半径です。ここでは、X線バーストという現象を使います。中性子星の半径を求める前に、まずは、光の色の話をしましょう。

 たとえば、身近な現象として炭火を考えてみましょう。炭火の輝きは、あまり熱くない時は赤く、たいして眩しくありませんが、温度が上がり熱くなる と黄色っぽくなり輝きを増します。その中に鉄釘を入れてみると、しばらくすると鉄釘も同じような光を放ちます。では、なぜ、全く違う物質が同じ色の光を放 つのでしょうか?答えは、上記の状況では温度だけで決まる光の性質を見る事になるからです。

 ある温度として考える事ができる光の場合、光の色は、温度によって変化します。さらに同じ色の光であれば、単位面積当たりに放射される光の強さは 光を放っている物質によって変化することはありません。つまり、光輝く色と単位面積当たりの明るさは、その物質の温度だけで決まっているのです。ここで注 意しなければいけないのは、温度と関係なく光の色や強度が決まる場合があるということです。たとえば、炎のように向こうが透けて見えるものは別です。それ らは、どのくらい透明か、また、元々どんな光を放射したかによって、あるいは色によってどのくらい透明であるかも違うので、温度とは関係ない色や明るさを 示します。また、表面が別のところから来た光を反射している物もだめです。たとえば、鏡は鏡自身の温度に関係なく、どれくらいのどんな光を反射しているか で色や明るさが変わりますね。ここで話題にしているのは、鉄釘や墨のような向こう側が透けて見えない物質で、熱くなって自分で輝いているものだけです。そ のような、向こう側が透けて見えない、自分で放射している物質からの放射は、黒体放射とよばれます。

 黒体放射では、色を見れば温度がわかり、単位面積あたりの明るさが決まっていますから、逆に全明るさと温度を測定すれば、光っている面積を逆算することができます。

 ここまでは、可視光での話のように書いています。しかし、X線の場合も全く同じです。可視光で温度を推定するために使う光の色というのは、光の波長分布 (エネルギースペクトル)のことですが、X線の波長分布(エネルギースペクトル)を調べれば、X線を出している物の温度が分かります。もし、それが「X 線」で、透けて見えない自分で輝いているものなら、単位面積あたりに出てくるX線の明るさは、その温度によって決っています。

 中性子星も、向こう側が透けて見えるとは考えにくく、X線バーストのほとんどは中性子星の表面全体で起こると考えられているので、X線バーストの時の表面温度(X線のエネルギースペクトル)と、全体の明るさを決めてあげれば、半径を求めることができます。

 この教材では、色光度図を用いて半径を求めます。X線天体は黒体放射していると仮定すると、半径と温度が決まれば色光度図上の点が決まります。データとモデルを比較することで、半径を求めてみましょう。

5.2.「ぎんが」衛星のデータを見てみよう

  質量の下限を求めた時と同じように小質量連星系でX線バーストを起こす有名な天体で X1608−522という天体のデータを用います。「ぎんが」衛星で取得した、このX1608−522というX線バースターの光度曲線をEXCELのワークシートとして書いたデータをX1608-522_burst.xlsに おきました。クリックしてファイルをどこかに保存してください。そして、保存した開いてみましょう。 これは、X線バーストを含む前後の光度曲線のデータ です。シートの下のタブが [data]となっていることを確かめてください。なっていなければ、[data]のタブをクリックしてください。

 光度曲線とは、決められた時間間隔(時間ビンと呼びます)に観測された光子の個数を時系列で表したグラフです。今回のEXCELのデータは光度曲線を作成するためのものです。まずはこのデータを理解しましょう。

 A列は、各時間ビンの中心時刻をA列4行のデータを取得した時刻を原点として表しています。単位は秒です。B列とC列は、1秒あたりに検出器が検出した光子の数を[photons/sec/m2]を表しています。B列とC列のデータの違いは、エネルギー範囲の違いです。この2種類のエネルギー範囲は、B列2行、C列2行に書いてあります。

 

 5.3.光度曲線のグラフを作成しよう

   データから光度曲線のグラフを作成してみましょう。

 A列をX軸、B列C列をY軸としたグラフを既に準備してあります。シートの下のタブ[X1608-522_LC]のタブをクリックしてください。横軸が時間で、縦軸が決められたエネルギー範囲にやってくるX線の毎mあたり、毎秒の数です。このグラフとデータから、113秒付近で観測された光子の数が急増していることがわかります。この部分がX線バーストです。中性子星の半径を求めるには、このバースト部分のデータが必要になります。

 さて、このグラフをよく見るとバースト部分以外でも、X線が検出されていることが分かると思います。これはX線がバーストを起こしていない時でも放射し ている成分です。中性子星表面からの成分もあるし、中性子星表面以外の場所(たとえば降着円盤)からの成分もあると考えられています。定常成分と呼ばれま す。X線バーストの時に、中性子星表面以外の成分はどうなっているのかよく分かっていないのですが、ここでは、定常成分はX線バーストの時に比べて比較的 小さいので、無視して、X線バースト時のX線をすべて中性子表面からのX線と仮定して解析を進めます。  

 問題 5 X線バーストは始まりから最大強度になるまで何秒かかっているでしょうか?グラフのX線バーストのあたりを拡大するとよいですね。

5.4.色光度図

 色光度図とは、光度曲線の低エネルギー範囲(0.75−7.9keV)と高エネルギー範囲(7.9−12.2keV)での光子数の比率を縦軸に、光子数の合計を横軸に表したグラフです。エネルギー範囲の違うところでの光子数の比は色に対応するというわけです。

 まずは、色光度図のX軸とY軸の値を計算しましょう。色光度図のX軸は全エネ ルギー範囲のカウント数の合計、Y軸は、低エネルギー範囲(0.75−7.9keV)と高 エネルギー範囲(7.9−12.2keV)でのカウント数の比率とします。D列にカウント 数の合計、E列に低エネルギー範囲(0.75−7.9keV)と高エネルギー範囲(7.9− 12.2keV)でのカウント数の比率を計算してみましょう。まずは、シートの下のタ ブ [data]をクリックして、データのシートにもどります。

 D列4行に  =B4+C4 と打ち込んでください。そうすれば、二つのバンドの合計ができます。
 E列4行には =C4/B4 と打ち込んでください。これで比ができます。
 次にこのD列4行とE列4行を、D列とE列の5行目以降の行にコピーしてください。総ての時刻の合計と比が計算できます。
 い海譴蕕瞭睛討鬟灰瓮鵐箸箸靴峠颪い討きましょう。D列1行に 「X線バーストの強度」、D列2行に目に、エネルギー範囲として 「0.75-12.2 keV」 それから D列3行目に、単位「Photons/sec/m」を書き込みましょう。E列1行目には色、E列2行目には「I(7.9-12.2keV)/I(0.75-7.9keV)」と書きましょう。E列3行目は特に書くことはないですね。 比には単位はありません。

次にD列をX軸、E列をY軸として散布図を作ってください。、エクセルのグラフウィザードを使って自分でやってみてください。グラフのタイトルには「色光度図」、X数値軸には「I(0.75-12.2 keV)」, X数値軸には「I(7.9-12.2 keV)/I(0.75-7.9keV)」と書いて何のグラフか分かるようにして下さい。

  作ったグラフは別のシートにして下さい。名前を「Intensity-Color Diagram」とすると良いです。[Intensity-Color Diagram]のタブができてそれが表示されます。X軸の強度が大きくなっているところがX線バーストのところです。光度(X軸)の増加とともに色(Y軸)も大きくなっていることが分かります。
  横軸をログ、縦軸はリニヤにすると見やすい点になります。横軸は100から1E6 までにするとデータがちょうど入ります。縦軸は0から0.4でよいですね。

   この色という値は、放射領域の温度と関連します。X線バーストは、中性子星の表面で「向こう側が透けて見えない自分で光る物質」からの放射と考えてよい ものです。ですから、黒体放射と考えてよいでしょう。グラフの色(Y軸)は、エネルギーの高いX線(波長の短いX線)の強度をエネルギーの低いX線(波長 の長いX線)で割ったものです。すなわち、波長の短いX線がどれくらい多く含まれるかを意味しています。波長が短いというのは、可視光の領域では青色、波 長が長いというのは赤いことを意味します。すなわちY軸は、X線の色のような概念を表しています。黒体放射で色というのは温度だけで決まりました。光度 (X軸)は、温度が決まれば、放射している領域の面積が大きければ大きいほど強度が強くなるので、逆に、強度から放射領域の面積が求められます。

 

5.5.黒体放射

 データから黒体放射と仮定した時の温度や面積を求めましょう。X線放射領域を温度一定の球と仮定し、その温度と、球の半径、それから、放射領域ま での距離も仮定した時、どのようなデータが期待できるかをモデル計算してみます。黒体放射の温度を与えると単位面積あたり、単位エネルギーあたり、単位立 体角あたりの電磁波の黒体放射として放射される光子の数分布をエネルギーに関する式で表すことができます。 これをプランク分布と呼びます。  次に、中性子星の半径を仮定し、また、中性子星から観測している人工衛星までの距離も仮定すると、観測している所にやってくる、単位面積、毎秒当たりの 光子数の数分布が分かります。そして、観測しているエネルギー範囲と同じエネルギー範囲の間を合計(積分)すれば予想される光子数が分かります。詳しい説 明は別途ありますので、ここをクリックして勉強してみてください。

   観測にあわせて二つのエネルギー範囲で光子数を求め、その、合計と比を求めれば、色光度図の中に点を打つことができます。いろいろな温度、中性子星の半 径、天体と人工衛星の距離を仮定してやることで、色光度図上にいろいろな点を打つことができます。これで、「ぎんが」衛星で検出したデータを比較できるこ とになります。

 

5.6.黒体放射モデルの計算

  それでは実際にEXCELで計算してみましょう。そのためには黒体放射モデルに使われているいろいろな物理定数の単位を揃えたりします。それは、別途説明があります。クリックして勉強してみてください。最終的には、黒体放射のモデルは

で、計算できます。 用いる単位は、光子のエネルギー()も温度()も keV です。これで、ある温度の時の黒体放射として放射される光子の数の分布というわけです。

 これをデータと比較するには、中性子星の半径と、中性子星までの距離が必要です。観測される光子の数分布は

     

となります。

 一般に天体の距離を正確に測定することは大変難しくて、ここで用いる天体 X1608-522の距離も不確定性が大きいです。今回は、X1608-522までの距離を8[kpc]とします。なので、

となります。これで、黒体放射モデルを作成する準備ができました。

まず、BlackBody.xlsと いうEXCELのファイルをクリックしてどこかに保存してください。そして、保存したファイルを開いてみましょう。 下のタブが [data]となってい ることを確かめてください。なっていなければ、[data]のタブをクリックしてください。はじめの10行は計算するためのパラメーターや最終的に求めた 結果が入る欄です。12行目から下が黒体放射の計算をするための欄です。A列の12行目から下は計算するエネルギー範囲の中心値、B列の12行目から下 は、それぞれのエネルギー範囲の幅を書きました。ここではモデル計算なので、実際の「ぎんが」のデータに比べて、より細かく、また、全体のエネルギー範囲 も広く計算します。C列より右の列が黒体放射の計算値です。計算したい黒体放射の温度と、距離を1行目と2行目に書きました。2行目はkpcを単位に書い てあるので、3行目でmに換算した距離を計算しました。行目は放射領域の半径を[m]を単位に書いています。すなわち、C列は距離8kpcにある、温度 1.0keVで半径2kmの球から放射される黒体放射のエネルギーに対する強さ(エネルギースペクトル)を計算しようというわけです。

  まずC列13行の中身を見てみましょう。

   =9.87E+35*$A13^2/(EXP($A13/C$1)-1)*(C$4/C$3)^2*$B13

  と入っているはずです。温度がC$1で球体の半径がC$3、天体までの距離が C$4の場合のエネルギー$A13で、1mあたり、エネルギービン幅(今の場合$B13なので0.2keV)あたり、毎秒の観測される光子の数を表しています。単位は [photons/sec/m2]です。 C列の15行目以降も同じような計算式が入っています。
 次にC列6行目を見てください。

   =SUM(C16:C51)

 と書いてあるでしょう。これはC16からC51までの合計ですから、0.8keVから7.8keVの間のエネルギー範囲で1mあたり毎秒観測される光子の数というわけです。

 同様にC列7行目を見ると

   =SUM(C52:C73)

と書いてあるはずです。これは、8.0keVから、12.2keVの間のエネルギー範囲で1mあたり毎秒観測される光子の数です。  そして、C列9行目では C列6行目とC列7行目の和、C列10行目には比を書いてあります。これらの数字で、色光度図を書けばよいわけです。
 では、他の温度や半径でも計算して見ましょう。なお、ここでは距離はいつも8kpcと固定しておくことにしましょう。なお、D列、E列には、すでに、1.5 keV, 2.0 keV の場合の計算をしてあります。

 。杜鸛澗里髻■椴鵑縫灰圈爾靴討ださい。1行目の温度を, 2.0 keVから, 2.5 keVと変更すれば、、2.5 keVのエネルギースペクトルが出来上がります。

ここまでで、距離は同じ(8kpc)ところにある、半径2000m(2km)の球から放射される、温度が 1.0, 1.5, 2.0, 2.5keVの黒体放射のエネルギースペクトルが計算できました。

ぁ_軸にA列のエネルギー、縦軸にC列からG列までのエネルギースペクトルとしたグラフを書いてみてください。

実は、下のタブの[黒体放射]をクリックしてみてください。両対数で書いた1keV と 1.5 keV のグラフがあります。このグラフを参考にして書いてみてください。
 まずは、ツールバーのグラフから、元のデータを選び、系列の「#REF!」を選択して、名前には
  =data!$E$1
 Yの値(Y) には
  =data!$E$13:$E$209
さらに、もう一つの#REF! も選んで、同じようにF列用に書き換えましょう。

次の図のようになるでしょう。

値の高いものから、2.5 keV, 2,0 keV, 1.5 keV,1.0 keV です。

 問題 6 黒体放射のスペクトルの特徴を見取ってください。

 ふたたび、下のタブの「Data」をクリックして、データのシートを表示してください。今までに、球の半径が2kmで温度が違う黒体放射のスペクトルを計算しましたが、

ァ,気蕕卜鵑鬟灰圈爾靴董半径が、4km、8km、16km、32kmの場合のそれぞれの場合で、温度が1.0, 1.5, 2.0, 2.5keV の場合を計算してください。4列一挙にコピーすると楽ですね。

これで、半径2kmの計算も含めて、半径5とおり、温度4通り、で合計20通りの計算ができました。

 

5.7.黒体放射モデルによる色光度図

 いよいよデータと比較するため、黒体放射のエネルギースペクトルから色光度図のグラフを作ってみましょう。実はデータのシートの6行目と7行目に0.8keVから12.2keVの光度 と比(色) が求まっています。いろいろな温度や半径の値が、D列からV列にも計算ができているはずです。

 それでは、 色光度図 を書いてみましょう。
   .哀薀佞砲靴燭の琉茲任△襦■達垢らV10までの領域を選択します。
  ◆.哀薀侫Εザードで散布図を選択します。
   あとは、グラフタイトルに「黒体放射の色光度図」、X軸のタイトルに「光度 (0.8-12.2 keV)」、Y軸タイトルに「色 I(8.0-12.2keV)/I(0.8-7.8 keV)」 のように、タイトルをつけてください。
  ぁ_軸をログ、縦軸はリニヤにすると見やすい点になります。横軸は100から1E6 までにするとデータがちょうど入ります。縦軸は0から0.4でよいですね。

できたグラフは、下のタブ「黒体放射の色光度図」 に保存してください。でも、グラフだけだと、どの点が何か不明です。どの点が何のデータか、確かめて見ましょう。

 データ点をながめると、5本の右上がりのカーブと見ることができます。左のカーブから、それぞれ、半径が 2km,4km,8km 16km 32kmに対応します。また、それぞれのカーブの含まれる4個の点は下から、温度が1.0keV, 1.5keV, 2.0keV, 2.5keVに対応します。

5.8.データと黒体放射モデルの比較

 データから作った色光度図と、黒体放射のモデルから作った色光度図を比較すると、中性子星の半径や温度が出るはずです。二つのグラフを比べて見ましょう。データはバースト時には光度は 2×104 photons/sec/m2程 度で色は0.25か0.3の間程度です。これを、黒体放射のモデルから計算した色光度図では、半径が8km程度で、温度は1.5keV程度ということがわ かります。 もっと詳しく見ると、バースト以外のところは、半径2から4km 温度が1.0keVあたりで、バーストが始まると、面積がすこし大きくなりながら、温度 もあがり、やがて温度が冷えてくることが分かります。でも、バースト以外のところでは、中性子星表面からだけではなく、違うところからのX線もあるかもし れませんし、黒体放射を使うという近似もよくないことが分かっているので、あまり、細かい数字にこだわってはいけません。

 これで、「ぎんが」衛星が観測したデータから中性子星の半径についての情報を知ることができました。でも、ここではいくつかの仮定をしています。

 1.X線源X1608-522までの距離を8kpc
 2.X線バーストは球状の中性子星の表面全体から等方的に放射されている
 3.X線バースト時のX線エネルギースペクトルは黒体放射である
 4.定常成分の効果を考えていない

とかです。距離の不確定性は、何らかの方法で解決する必要があります。その他の仮定も精度の高い研究をする時は、不十分であることが分かっています。しか しながら、ここで行ったような大雑把な計算でも、距離の不定性以外は何倍も大きく間違うことはありません。また、距離も今のところ2倍も間違っていないと 思われますので、半径も2倍程度以内ではあっていると思われます。従って中性子星の半径は数kmから十数kmであることがわかります。

6.応用問題

この教材では、中性子星と考えられているX1608-52という天体の質量と半径を求めてみました。質量を求め る時は、定常状態のX線のフラックスを使いました。でも、この天体はX線バーストを起こしてもっと明るくなるわけですね。では、X線バーストの時の明るさ を使えば、もっと本当に近い質量が求められると考えられます。この教材では、X線バーストのデータは2バンドのデータしかありませんが、これを使っても同 じ様にフラックスの近似値は計算できます。是非、計算して、質量のよい下限値を求めてみてください。


 さらに、X1636−536 という別のX線バースターのX線バーストのデータを準備しました。X1636−536の距離も充分に分かっていませんが、 やはり8kpc程度と考えられています。エネルギー範囲が同じでないので、黒体放射の計算もデータにあわせて色光度図を作り直さないといけませんが、同じ ように半径を求める事ができます。強いX線バーストの時は物質が吹き飛んでいる事 (温度が下がり半径が増大する現象)も分かり物もあります。

是非挑戦してみてください。

 X1636-536_No1
 X1636-536_No2
 X1636-536_No3
 X1636-536_No4

問題のまとめと答え

 

問題1

 の単位はどうなるでしょうか?
    答え エネルギーは kgm2/s2 で、速度はm/s だから、kgm/s となり、運動量の単位である。

問題2

問題2:5行目のバンドのエネルギー範囲はどこからどこまでですか?  
     答え 2・3keV から 4.6keV

問題3

問題3; 光度の単位はどうなるでしょうか? 
     答え J/sec または  W

問題4

問題4: 求めた中性子星の質量を、太陽質量と比較をしてみましょう。太陽質量Moは Mo=1.99×1030 [kg] です。
    答え  

問題5

問題5:X線バーストは始まりから最大強度になるまで何秒かかっているでしょうか?
     グラフのX線バーストのあたりを拡大すると見やすいですね。まず、グラフの横軸の数字をダブルクリックして下さい。軸の書式設定というウィンド ウが出てきます。メモリタブをクリックすると、横軸の最小値、最大値が入力できます。100から300とすると、バースト全体が、100から130とする と、立ち上がりがよく見えます。
     答え  約6秒です。でも3秒程度で元の明るさの10倍程度になってます。このようにかなり早い時間で強度が変動することから、X線は小さい領域で放射されていることが分かります。

問題6

問題6:体放射のスペクトルの特徴を見取ってください。
    答え:
 1. それぞれのグラフは、もっとも高いピークがある。
 2.ピークのエネルギーは温度が高いほど大きくなる。
 3.同じエネルギーのところで、温度が高いほど明るくなる。
 4.ピークよりも低いエネルギー領域では、両対数で書くと、エネルギーに対してほぼ直線的に明るくなる。
 5.ピークより高いエネルギー領域では、両対数で書くと、低いところで増加した割合より、急激に減少する。

等のことが言えるでしょう。そのほかにも気が付いたことがあるかも知れませんね。

Last Modified: 2010-3-19