宇宙の化学進化 - 宇宙の中での元素の流転

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宇宙の元素量の測定

いろいろな種類の天体の中の元素の量を測定することは、天文学の基本です。 元素の存在量によって、天体の起源や歴史を推定できます。 天文学の長い歴史の中で、太陽や天の川銀河内の星での元素の存在量が測定されてきました。 これまではこれらを「宇宙の元素量」と呼んできました。 しかし、最近の観測によって、宇宙には、星の総量を上回る量の物質が、高温のプラズマ状態で存在することがわかってきました。したがって「宇宙の元素量」を正しく測定するには、銀河団をはじめとするプラズマの中の元素の量をX線によって調べることが必要です。

元素の起源

宇宙の歴史の中で、水素とヘリウムの大部分はビックバンで作られます。 それ以外の元素の大部分は、星の中や超新星爆発で作られます。 天文学者は、後者の元素をまとめて「重元素」と呼びます。 星の誕生と爆発が繰り返されると、少しづつ、この重元素の割合が高くなっていきます。 したがって、この重元素の割合から、星の世代交代の進み具合が分かります。 また、星の質量や超新星爆発の種類によって、作られる金属の組成比 (例えば酸素と鉄の比)が変わってきます。 元素の起源と流転については、下の図、 あるいは 「一家に一枚 宇宙図」を参考にしてください。

図5: 宇宙の中での元素の流転。今回の観測対象である銀河団プラズマを薄い黄色で示しています。 (C) T.Tamura/JAXA