広帯域スペクトル計(WBS)
太陽フレアが発生すると、コロナ中のプラズマ粒子の加熱と加速が急速に起こります。超高温に加熱されたプラズマからは軟X線(数キロ電子ボルト程度)が放射され、
高エネルギーに加速された電子やイオンは、惑星空間に放出されたり、太陽大気と衝突して硬X線(数10〜数百キロ電子ボルト程度)やγ線(数百キロ電子ボルト以上)
さらには中性子を生成します。この広いエネルギー帯域のスペクトルの観測は、プラズマ粒子の加熱および加速のメカニズムの解明に重要な手がかりを与えてくれます。
「ようこう」に搭載されてる広帯域スペクトル計は、軟X線スペクトル計(SXS)、硬X線スペクトル計(HXS)、γ線スペクトル計(GRS)
の3種類の検出器で構成されています。
軟X線スペクトル計(SXS)
SXS検出器は、キセノンと二酸化炭素を封入したガス比例計数管で、2〜30キロ電子ボルト
の軟X線を測定しています。この検出器からは、エネルギースペクトルを測定する
128チャンネルのデータと、強度変動を測定するデータが得られます。
放射線強度変動データは、フレア発生の判定にも使用されており、この判定がなされると「ようこう」は、
フレアモードと呼ばれるフレアを集中的に観測するモードに入ります。
硬X線スペクトル計(HXS)
HXS検出器は、ヨウ化ナトリウム・シンチレーターと光電子増倍管を組み合わせたもの
であり、30ー600キロ電子ボルトの硬X線を測定しています。この検出器からは、エネルギー
スペクトルを測定する32チャンネルのデータと、強度変動を測定するデータが得られます。
この検出器で得られたフレアからのエネルギースペクトルから、電子と陽電子の対消滅に伴う
ラインX線(511キロ電子ボルト)や、ヘリウムの原子核がリチウムやベリリウムに衝突して発生する
ラインX線(約430キロ電子ボルト)が観測されました。
γ線スペクトル計(GRS)
GRS検出器は、ビスマスゲルマニウム酸素(BGO)・シンチレータと光電子増倍管を組み合わせたもの
であり、300キロ電子ボルトから100メガ電子ボルトのX線・γ線を測定しています。
この検出器からは、エネルギースペクトルを測定する128チャンネルのデータと、強度変動を測定するデータが得られます。 この検出器で得られた巨大フレアからのエネルギースペクトルから、加速された陽子やイオンが太陽大気に衝突して発生するラインγ線が観測されました。その加速された粒子の組成は、フレアによってかなり異なっていた事が分かりました。
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