ブラッグ結晶分光器(BCS)

ブラッグ結晶分光器


 「ようこう」は、太陽から放射される軟X線からγ線までの広い波長領域を同時に観測しますが、その中でブラッグ結晶分光器は軟X線輝線スペクトルを高波長分解能で得ることができる観測装置です。観測対象は、
観測対象 波長 波長分解能
硫黄:15回電離イオン 5.0385Å 3.232 mÅ
カルシウム:19回電離イオン 3.1769Å 0.918 mÅ
鉄:25回電離イオン 1.8509Å 0.710 mÅ
鉄:26回電離イオン 1.7780Å 0.565 mÅ

の4つです。太陽から放射された軟X線は、ゲルマニウムの湾曲結晶でブラッグ反射し、一次元位置感応型のガス比例計数管で検出されます。
 一般に、結晶に入射する軟X線は、それぞれの波長に対して、結晶の格子間隔で決定されるブラッグ角を満たす場合にのみ反射されます。この結晶に対する軟X線の入射角を変化させることにより、軟X線スペクトルを観測できます。前極大期では,「ひのとり」衛星自身が太陽を「藪睨み」しながら回転してスペクトルを観測していました。これにより入射角を変化させてスペクトルを取得していたのです。それに対して「SMM」では、衛星自身を回転させずに、湾曲結晶を用いてスペクトルを観測しました。太陽から放射されるある波長の軟X線が、結晶の特定の位置に対してのみブラッグ角を満たすようにしたのです。「ようこう」では「SMM」の方式を採用し、さらに湾曲結晶を大きくすることにより、検出感度を向上させました。
 一次元位置感応型の比例計数管は、ウェッジ=ウェッジ・カソード読みだし方式を採用しました。ウェッジ=ウェッジ・カソードとは、2枚の鋸型のカソードを接しないように噛み合わせたものです。波長分解能等の検出器の性能を向上させるために多重アノードを採用しています。ステンレス製の容器内にそのカソードとアノードを据え付けて,そこにキセノンと二酸化炭素のガスが封入されています。そして、2枚のカソードから得られる電流の比から軟X線が入射した位置を特定し、湾曲結晶の性質と組み合わせて、その入射した軟X線の波長を同定するのです。

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