Technology / 実現するための技術

高精度着陸
軽量探査機

月までの軌道

 SLIMは限られたリソース(許容重量)を各コンポーネントにうまく割り当てて月を目指します。その対象には、月へ辿り着き、着陸するまでに必要な推進薬も含まれます。そこで、SLIMでは下図のような軌道を検討しています。地球の周りを周回しながらタイミングを見計らい、遠地点(=地球とSLIM探査機が一番離れる点)を月軌道の距離まで押し上げます。その後、月の近傍を通過する際に月の重力を利用して軌道変更する月スイングバイを行い、遠地点高度をさらに上げます。月スイングバイ後は、太陽潮汐力を利用して月との会合ポイントへ到達します。

着陸シーケンス

  • 着陸シーケンス開始前 : 月周回楕円 600km × 15km
  •  シーケンス開始前・月周回楕円軌道において、地上からSLIMの軌道・位置を決定し、SLIMに通知します。その情報をもとに、SLIMは高度15kmの地点(近月点)でメインエンジンの逆噴射(探査機進行方向とは逆方向に噴射)を開始し、着陸シーケンスに移行します。

  • 動力降下フェーズ : 高度 15km→3.5km
  •  着陸シーケンスのひとつ目は動力降下フェーズです。動力降下フェーズ中には、開始・終了時を含めて合計4回、約50秒間の「コースティング」期間を設け、その間はSLIMに搭載したカメラが月面搭載となるように姿勢を調整します。コースティング期間中に、カメラで月表面を撮影、その画像から自分がいる位置・速度を高精度に推定し、併せて、着陸点へ向かう軌道の再設計を搭載計算機上で行います。
     SLIMはこのような自動制御により着陸地点の上空に到達します。

  • 垂直降下フェーズ : 高度 3.5km → 0m
  • SLIMは着陸地点の上空に到達後、着陸レーダにより高度を検出しながらほぼ垂直に降下します。
  • 障害物検知 : 高度 約50m
  •  垂直降下フェーズの途中、ある高度(例えば約300m)において「障害物検知」を実施し、探査機直下の障害物の状況に応じて水平位置の微調整を行います。

  • メインエンジンをカットオフ : 高度 約3m
  •  月面近く(例えば高度約3m)に達した時点でメインエンジンをカットオフし、姿勢制御を行いつつ着陸します!!

クレータを使って
自分の位置を知る
探査機自身が考える

 SLIMがピンポイント着陸する前には、月上空で自分の位置を正確に知る必要があります。
 SLIMはカメラを月表面に向けて撮影した画像を処理してクレータを認識し、メモリにあらかじめ内蔵された月面の地図と照合することで、自身の位置を精度良く測定します。しかし、宇宙の過酷な環境できちんと使えるコンピュータは、どうしても地上で使われているコンピュータと比べると低い処理能力になってしまいます。そのため、SLIMでは専用の計算効率の高い画像処理アルゴリズムを開発し,精度と処理時間を両立させています。

月科学にとって
面白い場所に着陸する

 斬新なサイエンス観測をするためには、これまでの月面着陸機が降りてきた月の“海”と呼ばれる領域(平坦な場所)だけではなく、斜面に着陸する必要もあります。例えば、クレータの地質調査を行うためには、地質調査に適した地点に着陸する必要があります。
 しかし、そのような地点の多くは急傾斜地であり探査機の着陸には危険が伴います。SLIMプロジェクトでは傾斜地への着陸に最適な、着陸脚や着陸方式の検討を進めています。

軽く、コンパクトな
脚の開発

 「アポロ」などでは、一種の“関節”(リンク機構)をもつ脚で衝撃を吸収していました。しかしリンク機構を採用すると、着陸着部分が大きく・重くなってしまいます。
 そこでSLIMでは全く新しい発想での着陸脚を開発しています。現在開発中の脚は、金属を3次元積層造形(3Dプリント)でスポンジ状に出力して作ったシンプルな構造です。スポンジ状の構造が潰れることにより着陸の衝撃を吸収する仕組みです。地上でのテストでは実用に足る結果が出ており、採用を有望視されています。

さらなる軽量化の
ために

探査機システムの小型化・軽量化のための、各要素技術の研究開発も進めています。

  • 推薬タンクを主構造の一部とする構造設計
  • 高効率薄膜軽量太陽電池の採用
  • SUSラミネート型リチウムイオン二次電池など、軽量な電源系構成部材

順次、解説記事を公開していきます。

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