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第6号 【飛翔分散特性実験】平成17年8月16日

水平発射再現実験では、ペンシルロケットはランチャを飛び出たあと キャッチャまで12mの距離を飛翔しますが、毎回同じ軌道を描くのではなくばらつきが生じます。 これは、ロケットの重さ・重心の位置・速度・推力などのわずかな違いが原因で起こるもので、 この軌道のばらつき具合を飛翔分散特性といいます。 イベント当日は大勢の観客の前で水平発射を行うので、安全性を確かめるためにも 飛翔分散特性を調べておくことが重要になります。

8月1日、能代で使用するペンシルロケットの機体があきる野実験施設に届けられました。 傷はないか、尾翼が曲がっていないかなど、ひとつずつチェックします。



その後ペンシル再現チームは能代へ移動し、8月2日〜6日の日程で飛翔分散特性実験は 行われました。本番で用いる機材・装置の一切を持ち込んで本番と同じ構成で水平試射をします。

-----スタンド組み立て-----

スタンドは「三角小屋」と呼ばれる建物の中に設置します。 設置作業は、スタンド班を中心に進められました。 2本のレールを一直線に設置し、その上にランチャや支持枠を配置してゆきます。

三角小屋

ランチャ乗せ&ターゲット貼り

トランシット用のターゲットを貼り、まっすぐに並んでいるか確認します。 その後、電気標的を貼り付ける支持枠を1m間隔で設置します。 奥行き約60cmのキャッチャにはウレタンフォームを重ね、ランチャの後ろに排煙ダクトを取り付れば、 スタンド完成です。

支持枠と排煙ダクトの設置

キャッチャ組立て

能代実験場職員の方々のアドバイスもいただき、 スタンド班いわく「今までで一番いい」状態でスタンドは組みあがりました。

-----飛翔計測-------

スタンドが完成すると、飛翔計測班を中心に各種計測装置の設置が始まります。 電気標的は、一回の試射につき
・ランチャ出口に1枚
・中サイズを3枚
・大サイズを6枚
の合計10枚を使用します。

電気標的の貼り付け

標的は支持枠と下の木枠に固定されます。木枠にはコネクタが取り付けられ、 標的の裸銅線と計測装置へつながる同軸ケーブルを接続します。

また、50年前にはなかったランチャ内のロケットの速度を測定する装置も導入されました。 ランチャの滑走路をはさむようにLEDとフォトダイオードをを取り付け、 ロケットが通過する際にLEDの光がさえぎられる時間をフォトダイオードで 検出する仕組みで、今回の再現実験における新しい試みです。

------光学--------

光学班は今回の実験で、4台の高速度カメラをまわしました。 撮影場所や照明の配置を考えながらカメラ調整を行い、本番でのカメラレイアウトを決定します。

光学調整

計測用の機材は、三角小屋から30mほど離れた真空燃焼試験棟に配置します。 左の写真、一番奥に点火管制盤があり手前の机に飛翔計測と光学班のパソコンなどが配置されます。 右の写真は、管制用の電球です。タイムスケジュールの「ロケットイグナイタ結線」から 「点火系スタンバイ」までの各項目が完了する毎に、電球をひとつずつ点灯していく仕組みです。



-----ロケット------

ペンシルロケットの組み立ては、スタンドのある三角小屋から少し離れた 建物で行われました。写真は、点火薬に電流を流すエナメル線の抵抗値を測定している様子です。 安全のため、測定は厚い壁を隔てた隣室で行います。この点火玉の抵抗値は0.846オームでした。

点火玉抵抗値測定

ロケットの組み立ては、全部手作業で行われます。 機体の胴体部分と尾翼の間は、ねじを締める要領で結合されます。 しっかりと締めるための道具も登場しました。

ペンシルロケットの組立て

実験は、点火管制班の「これよりタイムスケジュールに入ります」のアナウンスから始まります。 各班準備完了の報告の後、ロケットがランチャにセットされ結線準備・点火系結線を行います。 結線後は、発射点の10m以内は立ち入り禁止となります。 点火ラインの絶縁・導通チェックを経て、各計測機器・点火系がスタンバイすると 「発射準備完了」のアナウンスがあります。カウントダウンをし、 X=0で鋭い発射音とともにロケットは勢いよく飛んでいきます。

スタンド付近の安全確認が済むと、実験メンバーは発射後の作業に移ります。

飛翔計測・音響・光学班は、データの確認。
ロケット・スタンド班は、ロケットの回収とキャッチャの修復。
キャッチャに突入した際、芯からどのくらいずれていたかをこの時記録します。 これは分散特性を知る重要なデータになります。 並行して電気標的の貼り替え・修復も行われます。 張替え作業は時間を要するので、メンバー総出で行われます。

破れた電気標的

標的の貼り替え

写真では標的の中心に紙が貼ってありますが、これは大サイズの電気標的を修復して2度 使用するようにしていたためです。19日の本番では標的の再利用をしないので、 毎回張替えとなります。

8月4日には報道公開があり、新聞社やテレビ局などの報道関係者が訪れました。 この実験はその日の夕方のニュースや翌朝の新聞で紹介されました。

報道公開

ペンシルロケット飛翔分散特性実験では、合計8回の発射を行い毎回データを取得しました。 その結果、軌道のばらつき具合は許容範囲内であり安全性も確認されました。 再現チームメンバーも本番と同じ体制で発射手順を行ったことで、幕張に向けてまた一つ 準備が整ったことになります。

本番まで、あと少し!