JAXA 宇宙科学研究所 海老沢研究室へようこそ
メッセージ, 方法, メリット

大学院へ進学・編入をお考えのみなさんへ

私(海老沢)は主にX線天文衛星を使って、ブラックホールに代表されるコンパクト天体や、天の川からのX線放射の観測的研究を行っています。日本のX線グループの一員として、グループの発展に協力するとともに、海外の衛星データもどんどん使っていきます。また、X線、スペースからの観測にこだわらず、他の波長の観測、地上観測もやっていきたいと考えています。今までにチリ、ハワイ、南アフリカで赤外線観測を行いました。大学院生も「すばる」望遠鏡のプロポーザルを書いてハワイで観測したり、単独で南アフリカで観測することもあります。私の研究室の大学院生には、原則として衛星データと地上データの両方を解析できるようになって頂きたいと考えています。X線に足場を置きながらも、地上観測もやってみたい、という意欲的な学生の進学を歓迎します。また、大学院博士課程からの編入も受け入れています。私の研究室に来られたら、辻本准教授と協力して、良い研究論文、修士論文、博士論文を書けるように精一杯指導します。

私の研究室に入った大学院生は、宇宙科学研究所に机を持ち、宇宙物理学研究系に属する学生と一緒に勉強します。修士一年、二年のときは、本郷や宇宙研での講義に出席することが必要ですが、基本的に研究活動は宇宙研で行います。大学共同利用機関である宇宙研の大学院生として、自分の研究を行うだけでなく、人工衛星の開発、試験、運用、観測装置較正等にも参加できます。また、科学衛星データベースDARTSやその他の情報システムの開発・運用も行っています(これが私のJAXAでの業務です)。更に、先端的な情報科学技術を活用した新たな天文データ解析手法の研究も行っています。もし興味があれば、大学院生もそういったシステム開発や情報科学的な研究に参加することも可能です。

プロフェッショナルな天文学研究者になるのは狭き門です。しかし私達は、大学院で天文学を学ぶことで以下のような能力が身につき、将来、社会のどの分野でも役立つと考えています。

  • 大量のデータを処理し、物理学だけを頼りに、雑多で不完全な事実から本質を抽出すること
  • 大きくて困難な国際プロジェクトを、英語で、皆と協力して進めること
  • 科学的思考に基づき、問題を規定し、解決し、文書として記録すること
  • 将来展望を持って高い目標を設定し、その達成に必要なスキルや知識を段階的に習得していくこと
  • コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、論理的な文章の書き方など
これらの経験を、実際の天文学研究・宇宙開発の現場でできる絶好の機会が宇宙研で得られます。当研究室の卒業生は、大学院で学んだ知識や経験を生かし、社会の様々な分野で活躍しています。今は、卒業後の進路についてあまり悩まず、大学院で楽しく天文学を学んでみませんか?

雰囲気を知るために相模原キャンパス特別公開に参加するのも良いですが、この日は大体忙しいので、別の日にご来訪されるのをお薦めします。アポイントメントをとって、落ち着いてじっくり相談しましょう。テレビ会議でも構いません。研究室在籍の先輩方も親身になって相談に乗ってくれます。これらの先輩方は、数年前まではみなさんと同じ立場でした。少しの勇気を持って我々の門を敲いた結果、いまでは、最先端の天文学研究を行い、衛星プロジェクトで重要な貢献し、数々の研究表彰を受けるバリバリの研究者の卵として活躍しています。研究室の様子を詳しくホームページで紹介してくれていますので、参考にしてください。2021年度の特別公開では、中高大学生に大学院生の実態を知ってもらうため、天文学を学ぶ宇宙研学生の紹介番組を作成しました。こちらもご覧ください。

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方法

JAXAと言っても、入学やそれ以降の制度は普通の大学の大学院と同じです。関連大学の「相模原キャンパス」のような位置づけと考えるとよいでしょう。私達は連携大学院方式を締結する下記の大学の併任教員になっているので、それらに入学・編入して我々の研究室を選択してください。もしくは、他の大学に入学・編入しておいて、受託指導学生方式で私達の研究室に来ることもできます。これらは、JAXA 全体の大学院生等の受け入れルールに依拠したものです。入り方によらず、実際の研究環境はどれも同じで、指導に区別もありません。

  1. 連携大学院方式 (1): 東京大学大学院 理学研究科 天文学専攻 ... 入学試験を受ける。修士1年から始まる修士入学と、博士1年から始まる博士入学があります。
  2. 連携大学院方式 (2): 総合研究大学院大学 物理科学研究科 宇宙科学専攻 ... 学部卒相当者を対象とした博士課程(5年一貫制)及び大学院修士課程修了相当者を対象とした博士課程(3年次編入学)があります。紹介ビデオ(総研大全体宇宙科学専攻もご覧ください。体験入学もできます。
  3. 連携大学院方式 (3): 関西学院大学大学院 理工学研究科 ... 理工学研究科からどうぞ。
  4. JAXA 受託指導学生方式 ... 国内外のどの大学に在籍していても、在籍しながら海老沢研で研究できる制度で、大学院生の何年生でも応募できます。

これまでの大学院生の出身大学は様々で、北海道大学(1名)、東北大学(2名)、東邦大学(1名)、千葉大学(1名)、東京大学(2名)、東京理科大学(5名)、青山学院大学(1名)、横浜国立大学(1名)、京都大学(2名)、関西学院大学(1名)、神戸大学(1名)、広島大学(1名)、愛媛大学(1名)です。

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メリット

JAXA 宇宙研で研究するよい点

  • 宇宙科学研究の中心 ... 飛翔体を用いた宇宙科学研究で、宇宙研は世界の中心の1つです。常に構内でいくつもの衛星の開発・運用が進行しており、その臨場感は大学ではなかなか経験できません。何かと世間の注目を浴び、友達にも自慢できます(かも?)。JAXAのIDカードやメールアドレスももらえます。
  • 人工衛星プロジェクトに直接参加できる ... 関連大学でもできますが、宇宙研の学生はその機会が特に多いです(指導教官の本務がそれであるため)。実際に人工衛星の試験や開発に参加したり、観測装置の較正や運用を行ったりします。これらの経験は、自分の天文学の研究を進める上で他の人にはない大きな武器になります。
  • JAXA に特有の設備が使える ... スーパーコンピュータ電波無響室磁気シールドルームなど、普通の大学にはあまりない設備を大学院生も自由に使いこなしてそれぞれの研究をしています。
  • 外国の宇宙機関の研究者に会う機会が多い ... 米国や欧州の宇宙機関 NASA や ESA のカウンターパートは JAXA なので、それら機関からの来訪者は普通の大学に比べてずっと多いです。セミナーを聞きに行って議論をさせてもらったり、一緒にご飯にいったりするチャンスが多くあります。
  • たくさんの関連研究室 ... 宇宙研のX線グループには、他にも、山崎研、国分研、堂谷研、石田研、山口研があり、更に赤外線、電波、宇宙背景放射、重力波グループもあって、学生の数が多いです。同じ建物の同じ階で部屋も入り交じって、一緒に多様な研究をしています。実は現在宇宙研の関連研究室で合同のHPを作成中です!まだ完成形は公開できてないのですが、進学希望の学生の方に特に見てほしい箇所を先行公開しますので是非ご覧ください。
  • 静かな研究環境 ... 相模原キャンパスは閑静な住宅街にあります。宇宙研の学生は研究志望の大学院生だけで、大学生(=夜遅くまで騒ぐ人)はおらず、研究に集中できます。宇宙研は許可さえ取れば、いつまでも研究していて構いません(特に私立大学では、休み中や夜は締め出されるところもある)。また都心よりずっと家賃が安く(ざっと半分以下)、家賃を払うために研究時間を削って長時間アルバイトをするという本末転倒なことをしなくて済みます。

海老沢研で研究するよい点

  • 海外の観測遠征に出かけられる ... 宇宙研の他のX線グループと違うところは、人工衛星とあわせて、地上望遠鏡を用いた観測を積極的におこなっていることです。ですので、自分の観測データを取得するために、海外の僻地へでかけられます。これまで大学院生は、ハワイや南アフリカに行っています。
  • みっちり指導 ... 先生方と大学院生は、1人ずつ毎週1回1時間程度の研究ミーティングをしています(普通の研究室では、だいたい、大学院生全員で毎週1回1時間のようです)。部屋も近いので、詰まったらいつでも先生方にアドバイスを求めにいけます。また、コロナ新時代に合わせ、slack や zoom を使って、オンラインでも研究相談を密に行えるような体制を整えています。
  • ポスドク研究員がいる ... 海老沢研にはほぼ途切れなくポスドク研究員が在籍しています。ポスドクとは、博士号を取得した後の研究員のことで、自立してバリバリ研究していて、たいてい最新の研究スキルを持っています。立場が大学院生と先生の中間で、より近い年齢から先生と違った観点のアドバイスをくれます。
  • 研究論文が(努力次第では)初年度に書ける ... 初年度から、論文になりそうな観測データの解析をし、さらにみっちり指導するので、頑張れば1年目に自分の論文を書く事ができます。これまでもたくさんの先輩が1年目に論文を完成させて、その後の奨学金の獲得などで有利な評価を得ています。
  • 大学院生研究者として経済的に自立するための(しかし競争率が非常に高い)プログラムへの採択率が高いです。特に博士課程進学希望の学生のほとんどがフェローシップを獲得しています。これまでに日本学術振興会特別研究員は8人、国際卓越大学院教育プログラムは4人、リサーチアシスタントには多数採用されています。
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