Last Modified: 10/27/2020 15:53:58

インターネットでJAXAにアクセスして宇宙を散歩するには?

科学衛星運用・データ利用ユニット(C-SODA)・宇宙物理学研究系 海老沢 研

私たちC-SODAのメンバーは、主に宇宙科学研究所(ISAS)が取得した宇宙科学データを使いやすい形に整備し、世界に公開するためのデータアーカイブDARTSの開発をしています。
1980年代移行の、ほぼすべてのISAS衛星・探査機のデータを保管して、無償で公開しています。

DARTSは主に研究者向けのサービスですが、その中から、一般の人でも楽しめそうなコンテンツを紹介します。

宇宙の小箱

DARTSの様々なデータを、一般向けにわかりやすく、画像や映像として表示しています。「宇宙カレンダー」では 1990年から今までの、それぞれの日に観測されたデータを見ることができます。また、宇宙の電波を音として聞くこともできます。

DARTS 太陽

ようこう衛星が見た1991年から2001年の太陽活動の様子
データをアーカイブする意義の一つとして、天体の長期間変動の様子を眺められる、ということがあります。
太陽にはよく知られた11年周期がありますが、1991年頃は非常に活発、1996年頃は活動が弱く、1999年頃からまた活発になってきたことが、一目でわかります。

DARTS 「かぐや」が取得した月データ

NHKのハイビジョンカメラが撮影したムービーの一覧 
2016年にこれらのデータがDARTSから公開されたとき、海外でも大きな話題になり、多くの主要メディアで紹介されました。
ABC news
TIME
The Planetary Society
National Geographic
ムービーの例:開始10秒くらいから地球が、30秒くらいから、そのちょっと左側に金星が上がってきます。
ムービーの例: 最初は太陽光の反射が強くて見えにくいですが、20秒くらいから月面が見えてきます。

KADIASを使うと、インターアクティブに月面を散歩しながら、いろいろなデータを重ねて表示することができます。

DARTS JUDO2

JUDO2 (https://darts.isas.jaxa.jp/astro/judo2)は、簡単にさまざまな宇宙画像を眺め、散歩 する(=移動、拡大、縮小)ためのシステムです。
JAXA Universe Data Oriented の2nd バージョンという意味で、JUDO2と名付けました。

JUDO2にアクセスして、宇宙を散歩してみましょう!

おとめ座銀河団

プレスリリース

前景はすざく衛星によるX線画像。背景は可視光(スローン・デジタル・スカイサベイ)。可視光ではたくさんの銀河が見えていて、X線では大きく広がった高温ガスが見える。

どこまで高温ガスが広がっているかを調べるために、すざく衛星で、銀河団 の端から端までをポインティングしている。

ペルセウス銀河団

「すざく」による観測のプレスリリース

X線と可視光の比較

すざく衛星で、端から端まで観測

ひとみ衛星は短い寿命でしたが、世界最高精度のペルセウス銀河団のX線エネルギースペクトルを取得しました。

「ひとみ」による観測のプレスリリース

NASAによる解説ムービー

JUDO2で、Chandra画像の上に、ひとみの画像の重ね合わせ

JUDO2からUDON2を使って、ひとみのエネルギースペクトルを見ることもできます。右側のメニューから、 "START UDON2 for Quick Look"を選んでください。

はくちょう座ループ

数千年前に起きた超新星爆発の残骸。

あかりによる赤外線、すざくによるX線観測の重ね合わせ
赤外線でもX線でも、爆発して広がっていく殻(シェル)の部分が明るく光っている。 研究対象として殻の部分が面白いため、すざくでは殻を中心的に観測した。X線で赤く見えるのは低温であるため(数100万度程度; 低エネルギーX線を赤く、高エネルギーX線を青く表示している)。

かに星雲

X線で非常に明るく、ほぼ光度が一定なので、標準光源としX線装置の機器較正に用いられる。

そのため、すざく衛星で何度も繰り返して観測された。可視光(DSS)とすざ くの視野の重ね合わせ(すざく画像はオフ)。

すざく画像を示すとこうなる。明るすぎて、CCD一杯にX線が広がっている。

Chandra衛星は視力が良いので、X線できれいなイメージが取得できる。中心に明るい中性子星があり、円盤とジェットが存在することがわかる。

銀河系中心

私たちの銀河中心。巨大ブラックホールが存在する。興味深い領域なので、多くの衛星が何度も見ている。 可視光では塵に覆われて真っ暗。デジタル・スカイ・サベイによる画像。

一方、赤外線は塵を透過するので、明るい。WISE衛星による画像。

すざくのX線画像と、すざく、あすか、XMMの視野を表示。研究対象として面白いので、いろいろな衛星が何度も繰り返して観測している。 すざくでは青く見えるのは、高エネルギーのX線で強いため(1億度程度の高温プラズマ)。

はくちょう座 X-1

有名なブラックホール天体。ブラックホールと通常の星(主系列星)の連星系。

可視光では、明るいが、それほど目立たない(SDSS)。拡大すると青い星が見える。これはブラックホールではなく、伴星。

X線では、この明るい(ROSAT衛星の全天サベイデータ)。ブラックホールの周りの降着円盤が強いX線を出している。

さそり座 X-1

全天で一番X線で明るい星だが可視光ではそれほど目立たない可視光(DSS)とX線(あすか)の重ね合わせ。明るすぎて、正面で見ると 壊れてしまうので、あすかでは視野を外して、視野の外から漏れ混むX線のみを見た。

拡大していくと、可視光で見えてくる。

超新星1987A、大マゼラン雲 (LMC)

可視光(DSS)とX線(すざく)の重ね合わせ。面白い天体が多い領域のため、何度もX線で観測されている。

あかり中間赤外線カメラでも、視野を少しずつずらして、LMC全体をカバーするモザイク観測を行った。 背景は、WISEの全天赤外線画像。

SN1987A領域を拡大。可視光(SDSS)とX線(XMM)の重ね合わせ

イータカリーナ

銀河系で一番重い星。赤外線(Spitzer)とX線(すざく)の重ね合わせ。

M81/M82

仲良く並んでいる銀河たち。可視光(DSS)とX線(すざく)の重ね合わせ。

黄北極領域 (North Ecliptic Pole; NEP)

「すざく」や「あかり」は、太陽パネルと望遠鏡が90度離れているので、太陽が黄道上を移動するとき、NEPは一年中観測できる。 「すざく」と「あかり」による黄北極のポインティング観測。

ちがった波長(エネルギー)の比較

MAXIによる、銀河面。 高ネルギーのX戦と低エネルギーのX線で、まったく違って見える。低エネルギーX線(赤色)で明るいのが超新星残骸、高エネルギーX線(青色)で明るいのは、ブラックホールや中性子星。

星座クイズ

  1. 星座は全部でいくつあるでしょうか?
  2. 星座の境界は、はっきりとは決まっていない?またははっきりと決まっている?
  3. MAXIによるX線画像と、すざく衛星の視野。さて、何座を見ているでしょうか?
  4. これも、MAXIによるX線画像と、すざく衛星の視野。 どちらがおとめ座銀河団で、どちらがかみのけ座銀河団?
  5. これは何座? こたえはこちら
  6. じゃあ、これは何座?
  7. これは何座?その右隣りは?
  8. これは?その左のは?

付録:JAXA外のサイト

国立天文台 HSC Map
すばる望遠鏡のHSC (Hyper Supreme Camera)で、広い範囲を深く観測したデータセットのビューアーです。

国立天文台 市民天文台プロジェクト 「ギャラクシークルーズ」
HSCによる世界最高品質データで映し出された多くの銀河の中から、一般市民が衝突・合体する銀河を探し出し、銀河進化の謎を解く研究を手伝うプロジェクト。

アメリカ天文学会のワールドワイドテレスコープ
元々、マイクロソフトが開発していたプロジェクトですが、アメリカ天文学会が正式に引き継いだそうです。

ヨーロッパ宇宙機構 (ESA)のESAスカイ
JUDO2のように研究者向けのツールですが、スタートしたときに、一般の人はEXPLOREモードを選ぶと良いです。