本日は,レンジング及びデータレコーダーの再生を行いました.
IKAROSは今日も順調にくるくるぐんぐん飛行しています.

地球角は現在80deg,つまりIKAROSのセイルの上側10degすれすれのところに
地球があることになります.水平線もとい,セイル平線ぎわの運用が
続いているわけです.

イカロスのアンテナは,できるだけ全方位をカバーするように作られて
います.これはセイルをどんな向きにしても,ちゃんと通信できるように
するために必要なことでした.

しかし巨大なセイルは,それ自身が電波の反射体なので,地球との通信には
邪魔になります.セイル面の方向に地球がドンピシャで重なったとき(=地球角90deg)
は通信できないのは当然として,できるだけセイル面ぎりぎりまで通信できる
ようにすることが,IKAROSのアンテナの設計への要求でした.

このアンテナ設計を担当したのは,JAXA宇宙研の鎌田さんです.
この方はアンテナ設計のプロ中のプロで,厳しい要求を出せば出すほど
情熱的かつ堅実に答えを出してくれる方です.
IKAROS以前のいろいろなソーラーセイル関係の実験でも,無理難題を聞いて
いただき,いろんなアンテナを作ってくれました.
私などは,「君の要求はいつもむちゃくちゃなんだよ,まったく」と
よく言われてよく怒られています.(その割に常に要求以上のものを作って
くれるのですが.)

当初のIKAROSプロジェクトからの要求は,
「地球角60degまで通信ができること」
というものでした.セイルがいかに通信にとって邪魔になるか,私たちも
わかっていたので,これくらいはなんとか達成してほしい,という想いで
提示した数字でした.鎌田さんの回答は
「なんとかしよう」
でした.

開発過程はいろいろ紆余曲折がありましたが,結果としてできたものは
期待をはるかに超えたすばらしいアンテナでした.地球角の要求値60degを
はるかに上回って,80deg以上まで通信ができたのですから.
この結果IKAROSは,死角が殆どない運用ができています.
blogでも何回かご紹介した通信不可帯運用がスムーズにできたのは,
この鎌田アンテナのおかげです.

まさにセイル平線上の魔術師.かわいい形して,にくいやつ.
普段は目立たないが,シャイでニヒルなあんちくしょう.
IKAROSの光る技術のひとつです.(Y)

PS.昨日T2さんがホットケーキをIKAROSの太陽電池の上で焼いていたようですが,
私なら肉を焼きます.太陽系空間,セイル平線上に地球の出をみながら,
太陽電池の上で肉を焼く.うーむ,おつですな.


8/25のIKAROS
太陽距離: 0.85AU
地球距離: 112178171km, 赤経=96.5°, 赤緯=18.9°
金星距離: 1.47AU(219755117km)
姿勢: スピンレート=0.2rpm,太陽角=1°

Today's IKAROS
Sun Distance: 0.85AU
Earth Distance: 112178171km, RA=96.5deg, Dec=18.9deg
Venus Distance: 1.47AU(219755117km)
Attitude: Spin Rate=0.2rpm, Sun Angle=1deg