本日の運用では,再生レンジング,HKデータの取得,スピンアップと
最後にもう一度再生レンジングを行いました.

1回目のレンジングは,前回,前々回のパスでのレンジングと組み合わせた3パスコースティング,
スピンアップ後の2回目のレンジングは,来週の2回のパスでのレンジングと組み合わせた
3パスコースティングを予定しています.
短い運用時間の中で,レンジ⇒スピンアップ⇒レンジの運用はギリギリの内容でした.
(※3パスコースティングなどについては2011/2/12のブログをご参照ください.)

今日は久しぶりの後半パスの運用(可視時間の後半のみの運用)になりました.
前半パスと後半パスは,運用時間が違うだけでなく運用の流れもかなり異なります.
後半パスの特徴は,運用開始後すぐにコマンド送信(アップリンク)が可能となるところです.
少し難しい用語を交えて表現すると,「テレメAOSとコマンドAOSが同じ」となります.

「AOS」というのは,"Acquisition of Signal"の略で,「あおす」と読みます.
直訳すれば「信号捕捉」といったところですが,これも専門用語で「入感」と呼んでいます.
対義語は「LOS」(Loss of Signal,ろす,消感)です.
IKAROSは「小型ソーラー電力セイル実証機」ですが,
IKALOSは「イカの発する電波が受信できなくなる」すみませんうそですまじめに説明します...

テレメAOSは,探査機が送ってくる電波を捕捉して受信可能となる時刻で,
地表線(地平線や山の稜線)から探査機が見え始める時刻になります.
一方,コマンドAOSというのは,地上の送信アンテナから電波送信が可能となる時刻です.
地表線ギリギリに見えている探査機に対して臼田局の強力な電波(20kW)を送ると,
他の地上の無線設備に悪影響を及ぼしてしまいます.
このため,ある程度の高度(仰角)になるまで電波の送信は行ってはいけないのです.
(電波法により決まっています.)
時間にすると数十分,この間は,探査機の状態は確認できてもコマンドを送ることができません.

前半パス終了時,あるいは後半パス開始時は,アンテナの仰角は充分高くなっていますので,
このような制約はありません.結局,運用の流れとしては
・フルパス:
テレメAOS→(数十分)→コマンドAOS→(双方向通信運用)→コマンドLOS→(数十分)→テレメLOS
・前半パス:
テレメAOS→(数十分)→コマンドAOS→(双方向通信運用)→コマンド・テレメLOS
・後半パス:
テレメ・コマンドAOS→(双方向通信運用)→コマンドLOS→(数十分)→テレメLOS
となります.

フルパスや前半パスでは,テレメAOS後にドップラー情報,通信状態次第でテレメトリも確認し,
ひと安心してからコマンドAOSとなって「よし,きょうもコマンド送るぞ!」と気合も入るのですが,
後半パスの場合は,パス開始と同時にコマンド送信可能なのでかなりせわしなくなります.
今日に至っては,AOS後にテレメトリで状態確認も行なわないまま
すぐにレンジングに移行,という心もとなさです.
(レンジング中はテレメトリ受信ができなくなります.)
また,コマンドLOSからテレメLOSまでの数十分というのも,
テレメトリで何か探査機に問題を発見しても次のパスまで手の打ちようがないため,
かなり不安な時間となります.

書いているうちに,もっとテクニック的なことを説明するつもりだったのに
「前半パスか後半パスかは心持ちの問題に影響する」というまとめになってしまいました...
朝は早くて身体的にはきついけれど,精神的に落ち着くのは前半パスかな,という気がします.


次回の運用は8月10日(水),前半パスの運用となります.(Y2)


8/4のIKAROS
太陽距離: 0.92AU
地球距離: 105517399km, 赤経=69.6°, 赤緯=16.5°
金星距離: 1.49AU(222848094km)
姿勢:スピンレート=0.5rpm, 太陽角=1deg

Today's IKAROS
Sun Distance: 0.92AU
Earth Distance: 105517399km, RA=69.6deg, Dec=16.5deg
Venus Distance: 1.49AU(222848094km)
Attitude: Spin Rate=0.5rpm, Sun Angle=1deg