本日の運用では,薄膜太陽電池・膜面状態の計測,スピンアップ,データレコーダの再生,
最後に再生レンジングと盛りだくさんの運用を行いました.

昨日(というより今朝...)のブログにもありました新しい実験に移行するため,
きょうは0.6rpmと久しぶりにスピンレートを大きめに上げています.
それでも2ヵ月前なら「そんな低いスピンレートで大丈夫か?」と心配していたレベルなのですが,
今ではもう「大丈夫だ,云々」と楽観できる経験ができてきました.
むしろ降りてくるデータを見ていると「おー,はやいはやい!」と感じるくらいです.

最近までの0.2rpmでの運用では,スピン1周分の変化を見るのに5分かかっていましたが,
今日0.6rpmに上げた後では,その3分の1の時間でスピン1周分の変化が見られます.
通信速度が速くなっているわけではありませんが,データの内容の変動が速いため,
体感的,あるいはデータ解析的にも「はやいっ!」となるのです.
ついでに,何かたくさん仕事をしたように錯覚してしまいます.


今回のスピンダウン運用で得られたデータは,日々運用と並行しながら解析しております.
IKAROSの姿勢や膜面の運動のような力学的な運動に関する研究では,
「理論」「数値解析(シミュレーション)」「実験」のデータの結果が揃ったものがチヤホヤされます.
ある対象の運動についてどんな法則があるのか理論を立て,
それを基にしたシミュレーションを行い,その結果が実験結果とあえば大満足です.
この3つが揃うことで,他のいろいろな運動についても予測できるようになるからです.
しかしなかなか一筋縄ではいかないので,何度も理論を見直したり,実験のやり方を変えたりします.

IKAROSでも,打ち上げ前に理論をたて,それを基にしたシミュレーションを行い,
膜面の運動について予測していましたが,打ち上げ後にIKAROSから得られた実験データと比較すると,
「予想どおり!」という結果もあれば,「・・・?」という理論の修正を迫られる結果もあります.
どちらも大切な結果であり,ちゃんと解析することでどちらも重要な知見となります.
今回のスピンダウン運用でも,「!」「?」どちらも出てきています.

先にあげた3つの中で,「実験データ」を得るのは宇宙力学においては特に難しいです.
IKAROSの実験データが毎日空から降ってくるというのは,本当に幸せな立場です.
この結果をもとに最大限の成果を得られるよう,解析を進めて参ります.


次回の運用予定は7/27(木)です.(Y2)


7/23のIKAROS
太陽距離: 0.97AU
地球距離: 104858898km, 赤経=53.3°, 赤緯=13.4°
金星距離: 1.48AU(221573086km)
姿勢:スピンレート=0.6rpm, 太陽角=1deg

Today's IKAROS
Sun Distance: 0.97AU
Earth Distance: 104858898km, RA=53.3deg, Dec=13.4deg
Venus Distance: 1.48AU(221573086km)
Attitude: Spin Rate=0.6rpm, Sun Angle=1deg